最新記事

電撃訪中

中朝首脳会談を両者の表情から読み解く

2018年3月30日(金)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

かつて安倍首相と会談した時、笑顔で握手しようとした安倍首相に対して、ニコリともせずに仏頂面をしたまま、カメラの前でそっぽを向くという、非礼この上ない態度を取ったことがある。

トランプ大統領やプーチン首相などと会う時には、最大級の笑顔を振りまく。その他の国でも、中国側に引き寄せたい首脳などと会談するときも、同様に満面の笑顔だ。

このたび、金正恩と会談しているときの習近平は、まさにその「最大級の笑顔」をサービスしていた。それもトランプに会う時のような、へつらわんばかりの笑顔ではなく、ややゆとりを持って、ほんの僅かではあるものの「上からの微笑み」的な笑みだったのである。

これは何を意味するかというと、「私はあなたを心から歓迎しますよ。今後、中朝は仲良くやっていきましょうね」というシグナルであり、「過去のことは全て水に流しましょう」という「承諾」でもあった。

習近平政権誕生後の初期のころ、中国としては金正恩に訪中するように、それとなく促したことはあるし、またプーチン大統領は2015年5月にモスクワで開催された反ファシスト戦勝記念日に習近平を招待し、そこに金正恩を招待して二人を会わせようとしたこともあったが、金正恩は応じなかった。

だから、その無礼も含めて「許しますよ」ということなのだろう。

習近平政権誕生後、習近平はアメリカとの新型大国関係を唱えて米中蜜月を演ずべくアメリカに媚びへつらった。それを指して金正恩は「裏切り者!」と習近平を憎んできた。だから中朝首脳会談も行っていない。

だというのに、今度は自分が、その「帝国主義」であり「最大の敵」であるはずのアメリカの大統領と会いたいと言っているのだから、その許しを乞わないわけにはいくまい。

それらを含めて習近平は金正恩に「許しますよ」と、「寛大な笑み」を送ったことになる。

そして何よりも重要なのは、「中朝軍事同盟も生きていますよ」というシグナルを発したことだ。

万一にも米朝首脳会談が分裂してトランプ政権が軍事オプションを選択したならば、中国は必ず北朝鮮側に付く。ロシアも当然、中国と肩を並べるだろう。

となると、何が起きるか――。

中国の軍事力はアメリカには遥か及ばないものの、アメリカは第三次世界大戦に波及するのを恐れて、アメリカは軍事オプションの選択が非常に困難になるということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大

ビジネス

加藤財務相、為替はベセント米財務長官との間で協議 

ワールド

トランプ米大統領、2日に26年度予算公表=ホワイト

ビジネス

米シティ、ライトハイザー元通商代表をシニアアドバイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中