最新記事

中国

トランプ、中国に知財制裁──在米中国人留学生の現状から考察

2018年3月26日(月)12時52分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

トランプ大統領と習近平国家主席(2017年11月9日、北京で開かれたビジネスフォーラムで) Damir Sagolj-REUTERS

トランプ大統領は知的財産権(知財権)侵害などを理由に、中国に対して高関税の制裁措置を決めた。在米の中国人留学生と中国政府との関係において、どのような形で知的財産権侵害が行われている可能性があるかを考察する。

トランプの言葉を「侵略」と訳した中国の裏事情

日本の報道では、たとえば「3月22日にアメリカのトランプ大統領は、中国による知的財産権の侵害などを理由に通商法301条に基づき、中国からの幅広い輸入品に高い関税を課す制裁措置を発動することを決めた」と表現しているものが多いが、中国は違う。

この「侵害」を「侵略」と統一的に用いて報道している。漢字の国であるだけに、その文字や発音の違いが持つインパクトは大きい。

もともとの英語を見ると"aggression"という単語を用いている。これは「他国への侵略行為」でもあり「権利などに対する侵害」という意味でもあるが、この場合は「侵害」と日本メディア流に訳すのが適切だろう。

アメリカにおける報道では< The White House says Trump will sign a presidential memo "targeting China's economic aggression." >となっている。

侵略と訳しても間違いではないが、敢えて激しく「侵略」という言葉を用いて報道することで統一しているのはなぜか。中国には「侵略」と訳さないと、都合が悪い事情があるからだ。

高関税を課せられる品目の筆頭は鉄鋼やアルミニウム。まさに中国が生産過剰を起こしている業界だ。だからこそ習近平政権は世界を動かして一帯一路巨大経済構想にはけ口を求めようとしているというのに、輸出先を抑えられたのではたまらない。アメリカは今のところ一帯一路構想に加盟していないが、中国にとっては沿線国だけでは生産過剰をさばき切れないので、アメリカに出口をふさがれるのは実に痛いのである。

そうでなくとも粗鉄を製造する地方の工場を次々と閉鎖に追い込みながら、レイオフされた労働者の反乱を抑え込むことに、中国は必死だ。農民や農民工を黙らせることは出来ても、荒くれ男たちが集まっている製鉄所の労働者を黙らせるのは至難の業(わざ)。農民工たちと違い、「工会(ゴンホイ)」という労働組合に相当した組織も持っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中