最新記事

アメリカ社会

米大学で増える孔子学院に、議会の取り締まりの網が

2018年3月24日(土)14時00分
ベサニー・アレン・イブラヒミアン

コロラド州デンバーのコミュニティーカレッジで開かれている孔子学院の絵画クラス RJ Sangosti-The Denver Post/GETTY IMAGES

<政治的プロパガンダに加担する外国の出先機関に「透明性」の確保を求める法案を米下院が検討中>

中国語や中国文化を教えるプログラムを実施している教育施設の孔子学院に、外国の出先機関としての登録を求める法律が、米下院で検討されている。中心になっているのは、ジョー・ウィルソン下院議員(共和党)。外国政府がアメリカの大学に資金を提供して政治的プロパガンダを行うことを取り締まろうというものだ。

この草案では、孔子学院を名指ししてはいない。しかし中国政府が出資し、アメリカの100以上の大学内に開設している孔子学院は当然、今回の法律の適用対象だ。孔子学院は最近、アメリカの大学で中国共産党がタブー視するテーマの議論を妨害するなど、学問の自由について懸念をもたらしている。

法律の草案は、アメリカがナチスに対抗する目的で制定した外国機関登録法と同じ趣旨だ。外国政府のためにロビー活動や講演を行う組織・個人を司法省に登録させ、資金の提供先や活動内容の報告を義務付ける。

「目的は外国機関と大学の透明性を確保することだ」と、ウィルソンは言う。「アメリカ国民はプロパガンダの標的になっていることを知る必要がある」

孔子学院について懸念を強める議員は増えている。マルコ・ルビオ上院議員(共和党)は2月、地元フロリダ州内の孔子学院の閉鎖を求めた。「国内外での中国の積極的な政治活動は、アメリカの教室に『潜入』し、探求の自由を抑圧し、表現の自由をむしばむものだ」と、ルビオは語っている。

3月初めにはセス・モールトン下院議員(民主党)が地元マサチューセッツ州の40の大学に書簡を送り、孔子学院の閉鎖や新規開校を控えるよう求めた。

中国共産党は、孔子学院が国の宣伝機関であることを公式に認めている。李長春(リー・チャンチュン)元政治局常務委員によれば、孔子学院は「中国の外国におけるプロパガンダ組織の重要な一部」だ。

タブー視されるテーマ

ドイツのゲーテ・インスティテュートやフランスのアリアンス・フランセーズも政府の援助で自国の言語や文化を世界に普及させる組織だが、これらの団体は政府から独立している。だが孔子学院はアメリカの教育機関に深く入り込み、受け入れ先の大学でチベットや台湾の問題などの議論を妨害している。

孔子学院では「はっきりとタブー視されるテーマがいくつかある」と、全米学者協会が昨年出版した孔子学院に関する報告を書いたラチェル・ピーターソンは言う。「孔子学院で語られる中国はいいことずくめ。孔子学院の中では、いいこと以外は存在しない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、地政学リスク過小評価に警鐘 銀行規制緩和に

ワールド

ロシアの石油輸出収入、10月も減少=IEA

ビジネス

アングル:AI相場で広がる物色、日本勢に追い風 日

ワールド

中国外務省、高市首相に「悪質な」発言の撤回要求
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中