最新記事

カナダ

「給料増やすのヤメロ!」ケベックの医師たちが昇給に反対する理由

2018年3月8日(木)17時08分
ライアン・シット

医師が報酬を取り過ぎれば制度そのものが破綻する? Ridofranz-iStock.

<カナダが誇る「国民皆保険」を維持するには、看護師や患者にもっと配分せよ、と700人以上の医師が署名>

カナダの医師数百人が、自分たちの報酬引き上げに抗議している。そんな金があるなら看護師や患者にもっと配分してほしいと、署名活動を行っているのだ。

カナダ東部ケベック州の公用語であるフランス語の抗議文には、こう書かれている。「われわれは公的医療制度を強く維持することの意義を信じている。従って、今回提示された昇給は受け入れられない」

2月25日以降、すでに700人以上の署名が集まった。米CNBC によると3月6日時点の内訳は、一般開業医213人、専門医184人、研修医149人、医学生162人だという。

カナダの公的医療制度は国の財政難のあおりで予算が削られており、看護師や医療スタッフに過度の負担がかかり、患者も医療サービスの低下に苦しんでいる。そんなときに、自分たちだけ給料が増えるのは納得がいかないという。

「今回の報酬引き上げは衝撃的としか言いようがない」と抗議文にはある。「医師の報酬だけは医療費削減の例外らしい」

「われわれはケベック州の医師として、昇給分を返上し、その財源を看護師の待遇改善や住民への医療サービスに還元するよう求める」

カナダ政府の公式ウェブサイトには、カナダは「国民皆保険を採用し、個人の支払い能力ではなくニーズに応じて医療サービスを提供する」とあるが、それはもはや絵に描いた餅になっているようだ。

医師が看護師と連帯

抗議文は次のようにも書く。「医療財源の配分を見直せば、看護師を肉体の限界まで追い込まなくても患者のニーズを満たす道が開けるはずだ」

カナダ保健情報局が2017年9月に発表した報告書によれば、2016年にカナダ保健省が医師に支払った報酬の平均は26万924ドル(税引き前)。

抗議の主体であるケベック州の医師団体MQRP(Médecins Québécois Pour le Régime)は2月17日にも、専門医を対象にした総額5億ドルの報酬引き上げを「破廉恥」と呼んで抗議した。

医師による抗議は、看護師たちが労働条件の改善を要求して行った座り込みをきっかけに始まった。MQRPは2月1日、看護師との連帯を文書で表明した。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

円滑な食品輸出は重要、状況注視=中国の通関遅延報道

ワールド

トランプ氏、住宅対策でMBS2000億ドル相当購入

ワールド

キーウにロシアの無人機攻撃、少なくとも2人死亡 火

ビジネス

中国CPI、12月は約3年ぶり高い伸び PPIは下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 9
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中