最新記事

ベネズエラ

経済危機のベネズエラで国民がやせ細っていく

2018年3月3日(土)16時40分
ロバート・バレンシア

スーパーの棚から商品が消え、配給制の食料品にも長蛇の列ができる Carlos Eduardo Ramirez-REUTERS

<石油依存経済が破綻して物質不足が深刻化。飢えに苦しむ国民の体重が11キロも減少している>

経済破綻と食料不足にあえぐベネズエラで深刻な数字が明らかになった。17年の1年間で国民の体重が平均11キロ減少し、貧困率は90%にも上るというのだ。

国内の3大学が毎年行っている調査によると、体重は16年が平均8キロ減だった。貧困率は14年が48%、16年が82%で、事態は明らかに悪化している。

17年の調査は、20~65歳の6168人を対象に実施された。そのうち60%の人が、過去3カ月の間に空腹で目が覚めたことがあると答えている。ベネズエラの人口3100万人のうち、約4人に1人が1日2食以下で過ごしている。

その食事も、調査の報告書によると、ビタミンとタンパク質が不足している。食生活の偏りの一因は超ハイパーインフレだ。ブルームバーグの調べでは、1月中旬までの12週間で年率換算約45万%と、驚異的な水準に達している。

複雑な通貨制度と外貨不足のために輸入代金の支払いがままならず、ベネズエラ国内では食料品と日用品を中心に物資不足が続いている。小麦粉など基本的な食料品を求めて、店に長蛇の列ができるほどだ。

「収入はないも同然だ」と、調査チームに参加したアンドレス・ベーリョ・カトリック大学のマリア・ポンセは言う。「物価上昇と人々の給料との差は社会全体に広がっている。貧困ではないベネズエラ人は事実上、1人もいない」

今回の調査は、ベネズエラの福祉について最も包括的に分析したものの1つと言える。政府が貧困に関するデータを発表したのは15年上半期が最後で、その際の貧困率は33%だった。

数十万人が国外に流出

つらい空腹は、国民の生産性を大きく損なう。石油生産など主要な経済部門でも、食べ物を買う余裕のない従業員は体力が落ちて力仕事をこなせない。

ベネズエラ国営石油公社の労働組合の幹部によると、17年11月と12月に北西部スリア州の掘削基地で栄養不良の従業員12人が倒れ、病院で治療を受けた。別の組合には、北東部の都市プエルト・ラ・クルスで仕事中に空腹のあまり意識を失った複数の従業員が窮状を訴え出た。

99年にチャベス政権が発足して以来、ベネズエラは社会福祉の財源を石油産業に頼ってきた。しかし、国の石油政策は失敗し、原油価格が世界的に急落したため、ベネズエラは国民の命さえ脅かされる人道的危機の瀬戸際に立たされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バフェット氏のAI生成偽動画、米バークシャーが警告

ワールド

米上院、政府再開に向け法案前進へ採決 40日間の閉

ワールド

米国、国連の人権審査会合を異例の欠席

ビジネス

米EVリビアンCEOにも巨額報酬、最大46億ドルで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 10
    「豊尻」施術を無資格で行っていた「お尻レディ」に1…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中