最新記事

中国社会

中国学生の反セクハラ運動封殺か 加害者を処罰するも抗議デモは禁止

2018年2月13日(火)16時41分

1月31日、中国当局は最近、大学キャンパス内のセクシャルハラスメントと闘うと宣言した。だが一方で、始まったばかりの「#MeToo(私も)」運動を封じ込めようとしているように見える。写真は、教授によるセクハラが発覚した北京航空航天大学。24日撮影(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

中国当局は最近、大学キャンパス内のセクシャルハラスメント(性的嫌がらせ、セクハラ)と闘うと宣言した。だが一方で、始まったばかりの「#MeToo(私も)」運動を封じ込めようとしているように見える。

中国教育省は1月14日、セクハラ疑惑をかけられている北京航空航天大学の教授の身分を剥奪したと発表。学生への嫌がらせ行為を容認せず、セクハラを予防する強力な体制の構築を検討することを明らかにした。

それから1週間後、50人以上の教授が、キャンパス内のセクハラを防止するための詳細かつ厳格なルールを求めるオンライン嘆願書に署名した。

だが、同じ日に予定されていた、北京航空航天大学からやはり教授によるセクハラ行為が発覚した対外経済貿易大学までのデモ行進は、主催者によって中止されたと、関係者2人がロイターに明らかにした。

主催者側は中止の理由を明らかにしていないが、参加する予定だった人物3人は、大学から参加しないよう言われたと語った。この件に関し、両大学ともコメントしていない。

また、女性の権利団体や学生らによると、「#MeToo」運動を支持するインターネット上の投稿は検閲されており、一部の大学は同運動を控えるよう学生に警告しているという。

この件に関し、教育省はコメント要請に応じなかった。

中国当局は、大学キャンパス内において、セクハラという組織的問題が起きていることを、国営メディアの論説の中でようやく認めつつある。

中国共産党機関紙の人民日報は1月7日付の紙面で、セクハラの被害者が被害を訴えた場合、支持されるべきだと主張。また別の党機関紙、光明日報も17日、教育現場におけるセクハラ問題を無視してはいけないと訴えた。

だが中国の大学キャンパスにおけるセクハラ問題が世間の注目を一段と浴びる中、政財界や芸能界を含む社会の他の分野においては、セクハラ被害の告発はほとんど見られない。米国とは対照的だ。

中国家族計画連盟が2016年に発表したデータによると、大学生の3分の1が性的暴力あるいは性的暴行の被害を受けたことがあると回答。最も多いのは、性的な言葉を浴びせられたり、キスを強要されたり、不適切な接触を受けたりといった内容だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUと南アが重要鉱物に関する協力協定、多国間主義維

ビジネス

BNPパリバ、中核的自己資本比率目標引き上げ 27

ビジネス

米アボット、がん検査エグザクトサイエンスを230億

ワールド

中国、仏製戦闘機ラファールの販売妨害で偽情報作戦=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 8
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中