最新記事

中国外交

対アフリカ援助外交は中国スパイの隠れみの?

2018年2月13日(火)16時30分
シャノン・ティエジー

中国とアフリカの「パートナーシップの象徴」だったAU本部ビルがスパイ疑惑の渦中に Tinksa Negeri-REUTERS

<資金も工事も丸抱えでアピール攻勢、中国のインフラ支援に隠された高過ぎる代償>

2012年1月、エチオピアの首都アディスアベバにアフリカ連合(AU)の新本部ビルが完成した。総工費2億ドルは中国が出資し、自国から輸入した建設材料を使い、その大部分を建設した。

「中国の驚異的な台頭と、アフリカとの互恵関係を目指す積極的な動きは、アフリカ再生のきっかけの1つ」だと当時エチオピアの首相は語った。高さ約100メートルのビルはAUおよびAU加盟国と中国のパートナーシップの象徴だった。

あれから6年、その象徴を揺るがす疑惑が浮上した。建設に協力した中国がAU本部ビルを盗聴、AUのコンピューターネットワークの情報が上海のサーバーにコピーされるよう設定していた可能性もある――。1月末に仏有力紙ルモンドがそう報じたのだ。スパイ行為が発覚した17年1月までの5年間、中国は本部ビル内の機密情報にアクセス可能だったという。

発覚後にAUは新たなサイバーセキュリティー対策を講じ、中国からのサーバー新設の申し出を断った。本部ビルの壁や机の下から隠しマイクも見つかっている。12年当時の報道によればビル内の家具も中国からの贈り物だったらしいが、今となっては疑惑の種だ。

一方の中国は即座に疑惑を否定した。中国のAU大使はエチオピアの報道陣に対し、AU本部に対するスパイ疑惑は「理解できない。ばかげている」と語り、「中国とアフリカの関係に問題が生じるのは必至」との見方を示した。

中国外務省の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官はさらに強気だった。「中国はアフリカの内政に一切干渉せず、アフリカの利益を損なう活動にも一切関与しない。中国とアフリカの協力関係はばかげた報道で邪魔されることはない」

記事によれば、AUに対しスパイ行為を行っているのは中国だけではない。イギリスとフランスの情報当局も過去にAUを標的にしている。少なくとも中国はアフリカの国を植民地化したわけではなく、現在は経済的に援助している――外交筋の一部にはそんな楽観論もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アルゼンチン予算案、財政均衡に重点 選挙控え社会保

ワールド

タイ新首相、通貨高問題で緊急対応必要と表明

ワールド

米政権、コロンビアやベネズエラを麻薬対策失敗国に指

ワールド

政治の不安定が成長下押し、仏中銀 来年以降の成長予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中