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2020年の未来予測は本当に実現可能?

2018年2月21日(水)16時00分
ケビン・メイニー(本誌テクノロジーコラム二スト)

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Donald Lain Smith-Blend Images/GETTY IMAGES

ある調査によると、旅行者の3分の2はロボットのおもてなしに抵抗がないという。ドイツ人とフランス人はロボット接客を嫌がる傾向があり、中国人は92%が「大いに結構」と答えた。未来のロボット経済を制するのは誰か、これで想像がつく。

サムスンは20年までに、スマートフォンから家電製品まで自社が販売する全てのデバイスに人工知能(AI)を組み込む方針だ。

シスコシステムズによると、20年には1000ドルのチップが人間の脳の演算能力を持つようになるらしい。自宅の冷蔵庫があなたの手に負えない数学の問題をあなたの子供に教えるようになったら、親の威厳はどうなるのやら......。

バーチャル・リアリティー(VR=仮想現実)の市場規模予測はアナリストによって差があり、20年には380億ドルか1200億ドル、はたまた1500億ドルになると言われている。

幸福とは言えない未来

一方、消費者向けテクノロジーは引き続き爆発的な進化を遂げるだろう。予測によれば、電話には自動翻訳機能が付き、インターネットに接続されたデバイスの普及台数は世界の人口の4倍に達するという。

消費者向けテクノロジー部門の成長でアップル、アマゾン、グーグル、フェイスブックはさらに巨大なテック帝国に成長するだろう。アマゾンの株式時価総額は20年までに倍増するとの予測もある。今でもジェフ・ベゾスCEOは世界一の富豪で、個人資産は1050億ドル。予測が当たれば、ベゾスの資産も倍増し、なんとポルトガルのGDPに匹敵する額になる。

仮想通貨を購入した人に朗報なのは、20年に仮想通貨全体の時価総額が4兆ドルに達するという予測だ。問題はどの仮想通貨が勝ち残り、どれが泡と消えるか読めないことだが。

このほかにも「20年までに予測」はめじろ押しだ。人工肉がスーパーで売られるようになる、日本がロボットを使って月面に探査基地を建設する、ドバイが行政手続きにブロックチェーン技術を活用するなどだ。

こうした進歩は私たちを幸福にするだろうか。残念ながら、イエスとは言い切れない。

大方の予測では20年には経済成長が鈍化する。AIの導入で失われる雇用よりも新たに生まれる雇用のほうが多いとはいえ、新たな職種には新たなスキルが必要なため、AIに仕事を奪われる人たちは救われそうにないからだ。

そんな人たちをさらに悲しくさせる予測もある。アルコール摂取による多幸感をなくすことで断酒を促す薬が20年までに市販されるというものだ。

これらの予測が全て当たるとすれば、もう1つの予測も説得力を持つ。合法大麻専門の調査会社アークビュー・マーケット・リサーチによると、アメリカの合法大麻産業の市場規模は20年には今の3倍近い80億ドルに達するという。

自分たちが生み出す未来に適応するため、私たちにはちょっとした助けが必要らしい。

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[2018年2月20日号掲載]

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