最新記事

中国経済

中国、一帯一路でカンボジアに投資加速 「第2のマカオ」誕生か

2018年1月3日(水)11時48分

12月7日、カンボジアのリゾート地シアヌークビルの状況は、中国との関係緊密化がカンボジアにもたらしている変化を鮮明に物語っている。写真は同地で西側諸国の観光客向けのレストランを営むBun Saroeunさん。11月撮影(2017年 ロイター/Matthew Tostevin)

カンボジアのリゾート地シアヌークビルにあるビーチと、増え続けるカジノに挟まれた、ほこりっぽい市街のほんの100メートルほど離れた場所でそれぞれのレストランを経営する通称Lao QiさんとBun Saroeunさんだが、彼らの運命は、これ以上ないほど異なっている。

Lao Qiさんは、中国からの投資ブームに乗って、他の数千人の中国人投資家とともにシアヌークビルに進出した。一方、Bun Saroeunさんの生計を支えているのは財布のヒモの固い西側諸国の観光客だ。とうてい採算は取れず、今や立ち退きを求められる始末だ。

シアヌークビルの状況は、中国との関係緊密化がカンボジアにもたらしている変化を鮮明に物語っている。

カンボジアのフン・セン首相は、中国からの援助や投資を後ろ盾に、自身の反対派弾圧に向けられた西側諸国の批判を無視しているが、そうした援助や投資は同時に、カンボジア経済をこれまで以上に中国経済に強く縛りつけている。

シアヌーク前国王にちなんで命名されたシハヌークビルは、1960年代にジャングルを切り開いて建設され、カンボジアで唯一の深水港を擁する港湾都市だ。

かつてカンボジアのエリート層の行楽地だったこの街は、クメール・ルージュによる虐殺、そして1970ー80年代の紛争期には苦渋を味わったが、その後、太陽と海、砂浜、そして人によってはセックスを求めるバックパッカーなど、西側観光客が立ち寄る場所になった。

だが、これまでにも少しずつこの街のカジノに流れ込んでいた中国マネーは今や大きな潮流となり、中国が掲げる「一帯一路」の最初の港湾としてデベロッパーが宣伝する都市への変貌が確実視されている。

「ここは20年前の中国のようだ。チャンスは大きい」。中国浙江省からカジノで働くためにこの地を訪れたLao Qiさん(33)はそう語る。彼の店で提供されるヌードルとチャーハンは、いまや1日数百ドルもの収入をもたらしている。

通りの向こうで59歳のBun Saroeunさんが経営する「エクスタティック・ピザ」では、1日100ドルも稼げればラッキーな方だ。ホテル価格の上昇と建設ラッシュによる騒音のせいで、西側諸国とカンボジア国内の観光客はこの街を敬遠している、と彼は言う。

「中国人も多少は来るが、今では彼らのための(中華料理)レストランがあるから」と語るBun Saroeunさん。店はビーチに近い一等地にあり、土地のオーナーは再開発のため、彼に立ち退きを迫っている。

中国人の流入は非常に意図的なものだ。

市政を担当するのは、フン・セン首相の盟友Yun Min市長だ。かつて地方軍司令官だった同市長は自ら何度も中国に足を運び、投資家を勧誘し、彼らに対する投資保護措置を提示している。

「中国人投資家にはもっと来てほしい」と市長はロイターに語った。彼の試算では、すでに市内の不動産の半分は中国人に賃貸されているという。「彼らは市に利益をもたらしている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ナスダック連日最高値、アルファベット

ビジネス

NY外為市場=ドル全面安、FOMC控え

ワールド

米軍、ベネズエラからの麻薬密売船攻撃 3人殺害=ト

ワールド

米、ロ産石油輸入巡り対中関税課さず 欧州の行動なけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中