最新記事

ロシア疑惑

トランプがムラー特別検察官を解任したら弾劾だ

2017年12月18日(月)17時45分
サマー・メザ

エルサレム首都認定という暴挙の次はムラー解任という暴挙か Yuri Gripas-REUTERS

<トランプが自らのロシア疑惑をチャラにしようとするのではないかという観測が強まっている。独立検察官を年内にも解任する、というのだ>

ドナルド・トランプ米大統領が、ロシア疑惑の独立捜査を指揮するロバート・ムラー特別検察官を年内にも解任する、という観測が強まっている。2016年の大統領選でトランプ陣営がロシアと共謀して選挙結果を有利に操作しようとしたという疑惑を葬り去るためだ。

もしそれが現実になったら、米議員と市民は一丸となって街頭に繰り出し、ドナルド・トランプ米大統領の弾劾を求めるべきだと、かつて米政府倫理局の局長を務めたウォルター・シャウブは言う。

「トランプ大統領と彼の弁護団が口々にムラーの捜査を悪しざまに言う現状は警戒すべきものだ」と、シャウブは12月15日の声明で言った。「米議会は、法の支配への暴力に加担してはならない。ムラー解任は、絶対に超えてはならない『レッドライン』だというメッセージをトランプに伝えるべきだ」

バラク・オバマ米前政権時代に米政府倫理局長に指名されたシャウブは、トランプ政権への移行期からトランプへの懸念をたびたび表明してきた。シャウブは、既存の倫理規定を大幅に改善する必要があるとして7月に辞任した。現在は米非営利団体「キャンペーン・リーガル・センター」のディレクターを務めている 。

シャウブは自身のツイッターで、マット・ガエッツ米下院議員(フロリダ州選出、共和党)の発言を批判した。ガエッツは15日に米CNNの番組に出演した際、ロシア疑惑を捜査するムラーについて「証拠があるなら出せ、何もないなら黙っておけ」と言った。

「ムラーの解任に向けて、共和党の同志にも協力を求めたい」とガエッツは言った。

クリスマス休暇の隙をついて

シャウブや米民主党議員に言わせれば、ムラーを貶める動きは断じて容認できず、実行されれば反発は必至だ。もしムラーが解任されれば、いつでも「街頭デモを行える」よう計画しておくべきだと、シャウブはツイッターで呼び掛けている。

シャウブは15日の声明の中で、ムラーの捜査チームによる利益相反の疑いを捜査する特別検察官を新たに擁立するよう求めたトランプの弁護士の主張について、明らかに「事態の混乱」を狙ったもので、ムラーの捜査を妨害する行為にほかならないと批判した。

今、議員らが懸念するのは、クリスマス休暇で人々の関心が薄れ、議会が休会する隙をついて、トランプが年内にムラーを解任する可能性だ。

ムラーが不当に解任されるのを阻止する法案成立に向けた、超党派の動きはある。だが捜査の緊張が高まるにつれ、米議会関係者の間では、トランプはいずれにしてもムラー解任という禁じ手を使うのではないか、という憶測が飛んでいる。

トランプが「レッドライン」を超えた場合に備え、議員らは計画を立てておく必要があると、シャウブは言う。すでに一部の議員はトランプの弾劾を求める決議案を提出したが、上下両院で共和党が多数派を占める議会ではことごとく廃案になった。ムラーの解任が発表された場合に備えて、自分も街頭デモに繰り出す英気を養っていると、シャウブは言う。

「アメリカの未来を決定づける瞬間になる」

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

クックFRB理事の後任候補、すでに選定中=トランプ

ビジネス

米8月CB消費者信頼感指数97.4に低下、雇用・所

ビジネス

アップル、9月9日に秋のイベント 超薄型iPhon

ワールド

クックFRB理事、トランプ氏による解任巡り提訴へ 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    「ありがとう」は、なぜ便利な日本語なのか?...「言…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中