最新記事

イギリス

ブレグジット&ザ・シティ イギリス金融界は没落していくのか

2017年11月30日(木)12時33分

11月20日、2019年に欧州連合(EU)を離脱するという英国の決定は、この国で最大級の成功を収めた産業に打撃を与えるのだろうか。写真はロンドンの金融街シティの地下鉄バンク駅で10月撮影(2017年 ロイター/Toby Melville)

2019年に欧州連合(EU)を離脱するという英国の決定は、この国で最大級の成功を収めた産業に打撃を与えるのだろうか──。

金融サービスセクターは、英国経済生産の約12%を占め、他のどの産業よりも多くの税金を納めている。英国がEU離脱(ブレグジット)後、4億4000万人規模となるEU市場に対し自由なアクセスを失うことで、このセクターは潜在的に大きな損失を被る可能性がある。

数世紀にわたり「シティ」と呼ばれたロンドンの金融センターは、本来の中枢である「シティ・オブ・ロンドン」から、超高層ビルの建ち並ぶ東部のカナリーワーフ、そして豪華な集合住宅が集まる西部のメイフェアへと拡大してきた。

首都ロンドンは、世界の外国為替市場の頂点に立ち、国際的な債券やファンドの取引が行われ、世界中に存在するどの金融ハブよりも多くの銀行を集めている。

それだけにブレグジットの衝撃に対する脆弱性も高い。ロンドンの取引所やトレーディングルームで行われる取引の約3分の1には、EU域内のクライアントが関与しているからだ。

こうした状況から、一部の政治家やエコノミストは、ブレグジット後、ロンドンが金融センターとしての優越性を失うだろうと予言している。これに対して離脱支持派は、ルールを自ら定めることができるようになることで、長期的には英国に恩恵をもたらすと主張している。

ロイターはシティの運命を占うために、6つの指標を監視するトラッカーを作成した。公共交通の利用状況、バーやレストランの新規開店数、商業用不動産価格、雇用などを通じて、金融セクターの「定期健康診断」を試みるものだ。

「最初は、現在起きていることよる真の影響を評価することは難しい。非常に混沌とした状況になるからだ」とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで銀行を中心に研究するトム・キルシュマイヤー教授は語る。「こうしたトラッカーは、現状の全体像を把握するのに役立つだろう」

英国が国民投票によってEU離脱を支持してから約17カ月が経過した。ロイターの指標は減速の兆候を示しているものの、激変と呼べるほどの衰えは見られない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中