最新記事

カルチャー

「紙の本」が読みたくてたまらなくなる図書館

2017年11月15日(水)17時30分
アナ・メンタ

中国に誕生した天津浜海図書館は息を呑むほど美しい Ossip vanDuivenbode/MVRDV

<電子書籍全盛の時代でも、こんな芸術的な空間なら図書館に入り浸ってみたい>

アマゾンの電子書籍リーダー「キンドル」は11月12日に10周年を迎えたが、紙の本を好む人はまだ大勢いる。そうした書物愛好家をとりこにしているのが、中国でこのほど誕生した目を見張るほど美しい図書館だ。

「天津浜海図書館」は、10月に中国・天津市の浜海にオープンした。オンライン建築誌「アーキデイリー」によれば、この壮麗な図書館の広さは3万3000平方メートルを超える。

広大なアトリウムには、床から天井まで届く書架が据えられており、最大120万冊の書物を収納できる(ニューヨーク公共図書館本館の蔵書は、2015年時点で推定250万冊)。

この巨大建築の指揮をとったのは、オランダの建築事務所MVRDVと、天津市城市規劃設計研究院に所属する地元建築家チーム。わずか3年で完成させた。

図書館の要は、ホール中央にある巨大な球体構造。この球体を取り囲むように、天井まで達する周囲の書架が曲線を描いている。そのため、ここを訪れた人は、目のなかを歩いているような感覚に陥る。その錯覚こそ、この図書館が「浜海の目」という愛称で呼ばれているゆえんだ。

webc171115-library02.jpg
Ossip vanDuivenbode/MVRDV


webc171115-library04(1).jpg
Ossip vanDuivenbode/MVRDV


都会の新たなリビング

MVRDVの共同創業者ヴィニー・マースはプレスリリースのなかで、「図書館の中心にあるのは、都会の新たなリビングルームだ。書架は、腰を下ろせるスペースであると同時に、上階への通路にもなる。書架の角度と曲線は、読書、散策、ミーティング、議論といった、さまざまな使い方を触発するように設計されている。そのすべてが、この建物の『目』を形づくっている」と言う。

webc171115-library06.jpg
Ossip vanDuivenbode/MVRDV


webc171115-library05.jpg
Ossip vanDuivenbode/MVRDV


電子書籍の売り上げが急増する今、世界の図書館はどうしたら利用者に足を運んでもらえるか頭を悩ませている。天津浜海図書館の人気が教えてくれるのは、息を呑むような書架の連なりが、まちがいなくその良い出発点になるということだろう。

webc171115-library07(1).jpg
Ossip vanDuivenbode/MVRDV

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米半導体ウルフスピード、破産申請へ 債権者と合意の

ワールド

ロシア大統領、ウクライナ戦闘による経済への壊滅的打

ワールド

北朝鮮、米の対イラン攻撃非難 「主権侵害」

ワールド

トルコがUNRWA支援強化、首都に事務所開設へ=エ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 9
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 10
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 9
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 10
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中