最新記事

米中関係

トランプ、習近平の懐柔策に「米中貿易不均衡は歴代大統領の責任」

2017年11月11日(土)14時16分


称賛と影響力

だがトランプ大統領は、中国ひいては習主席が、台頭する大国として振りかざす強い影響力を認識しているとみられ、最近は同主席を「キング」に例えている。また、自身が抱える最大の世界安保問題に対処するため、北朝鮮に対する中国の影響力が必要だと確信している。

しかし、ご機嫌取りは「諸刃の刃」である。中国は、北朝鮮問題でさらなる行動を求める米国の圧力をかわし、貿易面においては、トランプ政権誕生で不可避と思われていた緊張の高まりを回避したいと考えている。トランプ氏は大統領選挙期間中、貿易慣行によって米国を「レイプ」しているとして中国を非難していた。

「中国は個人的関係を非常に重視する。中国の指導部がトップダウンであることを考えると、習主席が外国のリーダーと非常に仲良く付き合っているのを目にすることは特に重要だ」と、中国のシンクタンク「中国グローバル化研究センター(CCG)」の王輝耀センター長は指摘する。

「良好な雰囲気のなかで、構造的問題に取り組む方がずっとやりやすい」

トランプ大統領と習主席のもっと個人的な交流の一部は、中国のソーシャルメディアで際立った役割を担っていた。そのなかには、トランプ氏の孫娘が「習おじいちゃん」「(習夫人の)彭おばあちゃん」と歌っている動画も含まれている。

なかでも、紫禁城で習主席がトランプ大統領に対し、中国は現在あるどの国よりも長く文化的歴史を保っていると説明している動画は特に人気があった。

「われわれはドラゴンの子孫と呼ばれている」と、習氏はトランプ氏に説明すると、トランプ氏は「それは素晴らしい」と笑顔で応えている。

トランプ大統領は9日の共同記者会見で、習主席のことを「非常に特別な人」とさえ表現し、あまりに熱が入っていたように見えたため、大統領が敬意を表しすぎるのではないかとの質問をティラーソン米国務長官は受けたほどだった。

それに対し同国務長官は「全くそのようには感じなかった」と答えた。

しかしホワイトハウスは、共同会見で両首脳が質問を受けないことを望む中国政府の意向を受け入れた。

習主席は公の場で、トランプ大統領からの個人的称賛に「返礼」はせず、いつものしかめっ面を貫いた。だがそんな習氏も、トランプ氏が貿易赤字を中国のせいにせず、習氏について物事を成し遂げる人物だと改めて語ったときにはほほえんで見せた。

「中国を責めたりしない」と、トランプ大統領は貿易赤字を巡り、こう語った。

「自国の市民のために他国を利用する国を責めることができようか。私は中国を大いに称賛する」

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

Tony Munroe and Christian Shepherd

[北京 9日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




ニューズウィーク日本版11/14号 特集:トランプのアジア戦略【本誌11/14号】特集:トランプのアジア戦略

アジアを初訪問するトランプ大統領── アメリカは台頭する中国にどう向き合うのか?

米外交 トランプの新戦略はアジアを変えるか
日米関係 トランプお友達作戦で安倍さん大丈夫?
アジア 日米同盟の不確かな未来
視点 対中戦略を改める好機を生かせ
詳しくはこちら=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノボノルディスク、不可欠でない職種で採用凍結 競争

ワールド

ウクライナ南部ガス施設に攻撃、冬に向けロシアがエネ

ワールド

習主席、チベット訪問 就任後2度目 記念行事出席へ

ワールド

パレスチナ国家承認、米国民の過半数が支持=ロイター
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 9
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 10
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中