最新記事

サウジアラビア

サウジ当局が逮捕者収容のため2軒目の高級ホテルを接収

2017年11月13日(月)17時31分
ジャック・ムーア

宮殿さながらのリッツカールトンが王子たちの留置場に Jacquelyn Martin-REUTERS

<サウジアラビア政府が進める汚職捜査の逮捕者が増え、リッツカールトンに次ぐ2つ目の高級ホテルが王子たちの「留置所」になったもようだ>

サウジアラビア政府が進める汚職捜査の逮捕者が増えすぎて、当局は一時的な留置所として2軒目のホテルを接収することになった。当局は一斉摘発を始めた11月4日頃から、逮捕した王族や富豪、政府高官らを収容するため、首都リヤドにある5つ星ホテル「リッツカールトン」を留置所として使っている。

リヤドの外交施設が集まる地域にある4つ星ホテル「コートヤード・バイ・マリオット」のフロント係は、当局がホテルを接収し、宿泊客を締め出したことを本誌に認めた。

「11月も12月も予約で一杯だったのに残念だ」と、フロントの女性は匿名を条件に語った。予約サイトで調べると、12月は今も最高級のスイートルームが満室状態だ。「当局の上層部が全室残らず予約していった」「突然の指示だった」と、彼女は言う。今ホテルに収容されているのが誰なのかは知らないという。

宮殿のようなリッツカールトンと比べると、今度のホテルは見劣りする。宿泊料金も安く、格付けも星が1つ少ない4つ星だ。

ホテルの利用客は全員が締め出され、別の宿泊先を見つけるよう伝えられた。利用客は憤慨したが、当局の指示だと説明すると「事情を理解してくれた」と女性は言った。「ホテルとしては、謝るしかなかった」

リッツ内部の動画が流出

コートヤードとリッツカールトンの両方を傘下にもつ米ホテルチェーン大手、マリオット・インターナショナルは、本誌の取材に応じなかった。当初、リッツカールトンが王子たちの留置所になっている話題になった時も、取引先や宿泊客のプライバシーを理由にコメントを拒否した。

文化情報省の国際コミュニケーションセンターにも書面でコメントを求めたが、返答はなかった。

リッツカールトンの利用客が突然締め出されたのは、一斉逮捕が始まった今月4日以降と見られている。その後、武装した警備員が監視する中、ホテルの宴会場の床に寝泊まりする人々を映した動画が出回ると、5月にドナルド・トランプ米大統領が宿泊したばかりの高級ホテルが王子たちの留置所になっていると、大きな関心を集めた。

サウジアラビア政府は異例の汚職捜査で、王族や有力な富豪を含む約50人を一斉逮捕した。米金融大手シティグループや米21世紀フォックスなどの大株主で、推定資産額が180億ドルに上る著名な投資家、アルワリード・ビン・タラル王子も逮捕者の1人だ。

拘束された有力者には、元リヤド州知事のトゥルキ・ビン・アブドゥラ王子や、国営石油会社サウジアラムコの取締役であるイブラヒム・アッサーフ元財務相も含まれる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機「ラファール」100機取得へ 

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 120億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 7
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中