最新記事

文学

ノーベル文学賞のイシグロ「世界の見方や芸術的アプローチは日本から」

2017年10月6日(金)13時56分

10月5日、ノーベル文学賞を受賞した長崎県生まれの英国人作家カズオ・イシグロ氏(62)は、「びっくり仰天して喜んでいる」と受賞の驚きを語った。写真はロンドンの自宅近くで取材に応じる石黒氏(2017年 ロイター/Toby Melville)

ノーベル文学賞を5日受賞した長崎県生まれの英国人作家カズオ・イシグロ氏(62)は、「びっくり仰天して喜んでいる」と受賞の驚きを語った。

「フェイク・ニュースの時代でもあり、最初はいたずらだと思って、(出版エージェントに)確認するよう頼んだ」とイシグロ氏はロンドンの自宅で記者団に語った。携帯電話でニュースを知った妻が、美容室から大急ぎで帰宅してきたという。

「そのうちに、スウェーデンから非常に感じのいい女性が電話してきて、まず私に賞を受けるか聞いた。何かのパーティーに招待しているかのような、とても控えめな感じだったので驚いた」と同氏は語った。

今回の受賞理由についてスウェーデン・アカデミーは、イシグロ氏の代表作「日の名残り」など一連の小説が「世界とつながっているという幻想的な感覚にひそむ深淵」を明らかにしたと評価。

受賞についてイシグロ氏は、「世界がその価値やリーダーシップ、安全についての不確実性を増しているなかで受賞した。この名誉を受けることが、少しでも、よりよくするための力となることを願っている」と語った。

また日本についても、「私はこの国(英国)で育ち、教育を受けたが、私の世界の見方や芸術的なアプローチの大部分は日本のものだと、キャリアを通じてずっと話してきた。なぜなら、私は日本人の両親に日本語で育てられたからだ」と述べた。

昨年のノーベル文学賞は米歌手ボブ・ディラン氏に贈られており、イシグロ氏の受賞は、同アカデミーが従来の文学解釈に回帰したことを示している。賞金は、約900万クローネ(約1億2400万円)。英国人作家のノーベル文学賞受賞は、2007年にドリス・レッシング氏が受賞して以来10年ぶり。

オースティンとカフカを足した世界

「彼は、この上なく優れた小説家だ。(19世紀の英小説家)ジェーン・オースティンと、(プラハ出身の小説家)フランツ・カフカを足すと、イシグロ氏になると思う」と、スウェーデン・アカデミーのサラ・ダニウス事務次官はロイターに語った。

「日の名残り」は、世界的に権威ある文学賞の一つである英国ブッカー賞を受賞し、俳優アンソニー・ホプキンズ氏の主演で映画化もされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ファイザー、通年見通し上方修正 第1四半期予想上回

ワールド

米コロンビア大などで300人逮捕、ガザ反戦デモ激化

ワールド

バイデン大統領、31万人に学生ローン免除 美術学校

ビジネス

英シェル、中国の電力市場から撤退 高収益事業に注力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中