最新記事

ノーベル賞

なぜノーベル平和賞の受賞者は、その後に世界の「失望」を招くのか

2017年10月4日(水)10時45分

1978年、当時のイスラエル首相だったメナヘム・ベギン氏は、キャンプデービッド和平合意を評価され、エジプトのサダト大統領とともにノーベル平和賞を受賞したが、その4年後の1982年、レバノン侵攻を命じた。サダト大統領は1981年にイスラム主義の軍将校により暗殺された。

1994年には当時のパレスチナのアラファト議長は、オスロ合意を評価され、イスラエルのラビン首相、ペレス外相とともに1994年の平和賞を受賞したが、この合意はアラブ・イスラエル間の紛争に関する永続的な解決をもたらさなかった。

ラビン氏は1995年に極右ナショナリストに暗殺され、その8カ月後にペレス氏も選挙に敗れて政権を失ってしまう。アラファト氏はその後、イスラエルによる占領に対する暴力的な蜂起である第2次インティファーダの期間中、パレスチナ自治政府を率いていた。

旧ソ連の指導者だったミハイル・ゴルバチョフ氏は、冷戦を平和的に終結させたことに対して1990年に平和賞を受けているが、1991年にはバルト諸国の独立を阻止するために戦車部隊を派遣している。ただし彼はその後、バルト諸国の独立を認めた。

1973年には、当時のキッシンジャー米国務長官は、結局は失敗に終わったベトナム戦争終結への取り組みを理由に、北ベトナムのレ・ドゥク・ト氏とともに平和賞を与えられた。米国政府が和平協定に違反していると批判したト氏は、史上初めて、平和賞を辞退した。ベトナム戦争は1975年、北ベトナム軍によるサイゴン陥落で終結した。

2009年に当時のオバマ米大統領が就任数カ月で平和賞を受賞した際には、オバマ氏自身も驚いたと語っていた。オバマ氏がその年の暮れ、授賞式のためにオスロを訪れたときには、すでにアフガニスタンの米軍駐留部隊を3倍に増強する命令を下していた。

「皆さんの寛大な決定が相当な議論を呼び起こしたことに私が気づいていないとすれば、私は怠慢だということになるだろう」とオバマ氏は授賞式でのスピーチで語っている。「遠隔の地で戦うために何千人もの米国の若者を派遣している責任が私にはある。殺す者もいるだろうし、殺される者もいるだろう。だから私は、武力紛争による犠牲を痛切に感じつつ、このオスロを訪れている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ビジネス

再送-〔ロイターネクスト〕米第1四半期GDPは上方

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円以外で下落 第1四半期は低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中