最新記事
ビジネス

低迷スーパー「ホールフーズ」を買ったアマゾンの皮算用

2017年9月12日(火)17時30分
ウィンストン・ロス

アマゾンに身売りしてホールフーズはかつての魅力を取り戻せるか Daniel Acker-Bloomberg/GETTY IMAGES

<世間を騒がせた巨額買収と新分野参入――高級自然食品チェーン「ホールフーズ」をアマゾンはいかにして再生するのか>

昨秋の蒸し暑い平日の午後、ルイジアナ州ニューオーリンズのブロード・ストリートは不気味に静まり返っていた。寂れた通りに立ち並ぶのは自動車用品店や自動車整備工場、中国料理店、美容用品店。そしてその先に、アメリカで最も高級な自然食品チェーン、ホールフーズ・マーケットの店舗がある。

店内は閑散としているはず......そんな予想は外れた。地元産の食品がずらりと並ぶ通路はさまざまな年代や人種の買い物客でいっぱいで、ここはニューヨークかと錯覚しそうになる。

ホールフーズが出店すれば、ブロード・ストリートのような場所でも繁盛する。食品業界では羨むべき話だ。だがこの10年ほどの間に、ホールフーズは売上高も同社ならではのカルチャーも失いつつある。かつては各地で唯一の自然食品スーパーを展開する企業という特別な地位にあったが、今では多くのライバルに追撃されている。

アメリカ人消費者は、より割安な自然食品をトレーダー・ジョーズやコストコ、クローガーで購入できるようになった。ホールフーズの株価は今年6月、4年前の半値に下落。米アマゾン・ドットコムが同社を137億ドルで買収すると発表したのはその直後だ。

【参考記事】アマゾンの複雑で周到過ぎる節税対策

既に指摘されていることだが、ホールフーズは長年、最高級の食品を売っているという口実の下、高過ぎる価格設定で顧客を搾取してきた。そうこうするうちに、台頭したライバル企業に市場シェアを奪われ、ブランド力を損なわれ、倫理的に取引されたヘルシーな食品の提供を使命とする企業ではなく、高額な商品を販売して「ホールペイチェック(給料全部)」を持っていく店と見なされるようになった。

「(ホールフーズが80年に創業してからの)20~30年間は、価格設定はオーガニックの自然食品の値段としては妥当だった」。ポートランド州立大学の経済学准教授で、ホールフーズについて研究したブライアン・ボルトンはそう指摘する。「でも、今は違う。同社の競争優位性もはっきりしなくなった。価格でも品ぞろえでもないし、店舗の立地条件でもあり得ない」

根強いホールフーズファンは、利益を追求する「強欲」なアマゾンによる買収を不安視する。だがホールフーズはとっくの昔に、カネのために使命を捨てている。92年にナスダックに上場したときだ。

同社のジョン・マッキーCEOは、短期投資家やウォール街のアナリストの間に非現実的な成長予測を生み出した。しかし株価は低迷し、業績挽回のために店舗をやみくもにオープンすることを余儀なくされた。凋落を招いたのはホールフーズ自身だったのだ。

アマゾンは恐るべき敵などではない。それどころか、業界最高の供給ラインから高品質の製品を選び抜いて販売する同社の強みを注入すれば、ホールフーズの救世主になるかもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、日本など名指しで非難 対イラン軍事作戦

ワールド

トランプ氏、イラン「一夜で壊滅」も 7日までの合意

ビジネス

FRB引き締め策を支持、雇用より物価を懸念=2地区

ワールド

ホルムズ海峡再開後、早期に原油輸出回復へ イラク石
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    認知症検査をすり抜ける? 「物忘れ」よりも早く現れ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中