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米スマート・バイブレーターはどこまで賢いか

2017年8月18日(金)18時00分
アビゲイル・ジョーンズ

だが女性たちは、それ以外にデータをどうやって活用すればよいのか。クリンガーはその疑問にはっきり答えられなかった。そこでさらなる疑問が湧いた。寝室にテクノロジーがあふれるのは、果たしていいことなのだろうか。

テクノロジーとセックスを融合させたのはライオネスが初めてではない。ここ2~3年で、投資家や技術者はより良いセックスを目指し、かわいい呼び名のスマート玩具を大量に生み出している。例えば「ラブライフ・クラッシュ(Lovelife Krush)」(149ドル)は、内蔵されたセンサーが骨盤底筋が締める力や持久力、血圧などを測定する。2018年上旬に発売予定の「バジーニ(VaGenie)」も、ほぼ同じ機能を持つという触れ込みだ。

「フィエラ(Fiera)」(199~249ドル)は、セックス前にクリトリスの周辺で緩やかな振動と吸引を行い、刺激を送ることで、血流を良くして膣液の分泌を促進し、性的興奮を高める。「アフターグロー(Afterglow)」(129ドル)は光力と振動を組み合わせたパルスウェーブ(脈波)技術を採用し、「自然な性的興奮を起こさせる」バイブレーターだ。下半身不随の患者や障害者、関節炎の女性を対象にしたバイブレーターもある。

長所は防水性だけ?

実を言えばシリコンバレー的セックス玩具は、動きが速くパターンが豊富で防水性があるという点を除けば、20ドルで買える既製品より優れていると言える根拠に乏しい。プライバシーの問題もある。2014年に発売された「We-Vibe」というバイブレーターは、電話を使ったセックスに大革命をもたらした。ユーザーはパートナーが隣の部屋にいようと地球の裏側にいようと、専用アプリを使えば遠隔操作でバイブレーターを操ることができるのが売りだった。ところが最近、We-Vibeのメーカーの親会社であるカナダのスタンダード・イノベーションズが、アプリを利用してバイブレーターの使用法に関する個人的なデータを収集していたとして集団訴訟を起こされ、今年3月に賠償金として375万ドルを支払うことで合意した。

【参考記事】ネット接続の大人のおもちゃで2人のヒミツがダダ漏れに

だが一方で、女性の10~15%が一度もオーガズムに達したことがないという事実を、性教育の怠慢とみなす人もいるだろう。「多くの女性は自分のクリトリスがどこにあるかを知らない」と、性医学が専門の産婦人科医で、アメリカ性教育・カウンセラー・セラピスト協会認定の臨床性カウンセラーでもあるマイケル・クリチマンは言う。彼は現在、性の健康と存続のための南カリフォルニアセンターの事務局長を務めているが、過去に10年ほど、ニューヨークにあるメモリアル・スローン・ケタリング癌センターで性医学・リハビリテーション・プログラムを運営していた。クリチマンは、バイブレーターには治療目的の使い道もあるという。「時折、更年期の女性から、昔は稲妻のごとくオーガズムに達したが、今はパラパラと降る雨のようでしかないという話を聞く。カップルにはセックスの倦怠期がある。医師の治療上の介入手段として、バイブレーターが役に立つ可能性はある。性的喜びを増大させる性的遊戯に慣れてもらうためだ」

【参考記事】年内にも発売されるセックスロボット、英研究者が禁止を呼びかけ

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