最新記事

英中関係

英ケンブリッジ大学がチャイナ・マネーに負けた!----世界の未来像への警鐘

2017年8月21日(月)17時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ケンブリッジ大学側は、明確に"with a Chinese request"(中国の要求に従って)遮断したと回答している。中国側からは「要求に従わなければ、中国での業務全般に悪影響が出ると警告された」とのこと。

遂に恐れていた中国の言論弾圧の世界化が始まろうとしている。

日本は対中政策を考え直すべき

自民党の親中派議員の中には、中国が提唱する一帯一路(陸と海の新シルクロード構想)やAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加して、バスに乗り遅れないようにすべきと提唱する議員がいる。

それに対して筆者は、「中華帝国形成に協力すべきではない。やがて中国共産党による言論弾圧が世界を制覇することになる」と警鐘を鳴らしてきた。そのことはこのコラム欄でも何度も書いてきたし、特に『習近平vs.トランプ 世界を制覇するのは誰か』は、その警鐘のために出版した本だ。

しかし日本政府は今のところ筆者の警鐘よりは、安倍内閣が進めようとする「中国へのシフト」に傾いており、特にトランプ政権がガタガタと崩れそうになっている今、中国に与(くみ)していないと、「日本が取り残されるのではないか」と気にしているように見受けられる。

しかし、「このケンブリッジ大学プレスの末路を見よ!」と言いたい。

これが日本を待ち受けている未来像なのである。

日本は、こんなことになっていいのか?

そうでなくとも、日本は中国の顔色ばかり見ている。

その結果、何が待ち受けているか、真剣に考えて欲しい。

日中国交正常化45周年などといっている場合ではない。中国が言論弾圧をする国で、ノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏が、どのようにしてその尊い命を落としたのかを忘れないようにしてほしい。チャイナ・マネーに尊厳を買われるような日本になって欲しくないと、祈るばかりだ。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中