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理想も希望も未来もなくひたすら怖いSFホラー『ライフ』

2017年7月7日(金)10時00分
ノア・ギッテル

乗組員の使命は、生命体を地球に持ち帰らず低軌道上で研究することだった。まだ小さな生命体が腕を伸ばしてきた意味を誤解して、ある乗組員は「好奇心が恐れに勝っている」と言う。

人類にも同じことが言えるかもしれない。人間は宇宙を熱心に研究したがるが、それによって自分たちが破滅に追い込まれるリスクは考えていない。

ここ数年、SF映画の人気が続いた。アカデミー賞の各部門にノミネートされた『オデッセイ』『メッセージ』『インターステラー』はどれも素晴らしかったが、尊大な感じもあった。SF映画はもっと娯楽に徹していい。あまり立派になると、風刺や遊び心が失われる。

【参考記事】ハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』に描かれなかったサイボーグの未来

真面目なSF映画は、バラク・オバマ前大統領を見ているようだ。オバマは科学振興に熱心で、科学誌ポピュラー・サイエンスの表紙にも登場した。少なくとも任期最初の数年は、地球の抱える重要な問題は科学で解決できるという信念を基に動いていた。

『ライフ』はそんな理想主義を笑い飛ばす。トランプ政権の反知性主義がはびこる今、科学は地球を救えないと言ってもおかしくない。人類の甘さを突いた『ライフ』は、今にふさわしい映画だ。

☆本誌7月4日発売最新号掲載☆

© 2017, Slate

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