最新記事

水中ドローン

中国が最先端の無人潜水艦を開発、南シナ海で米艦艇を簡単に捕捉?

2017年7月31日(月)15時20分
トム・オコナー

中国国営テレビ局CCTVが映した無人潜水艦「海翼」 CCTV/YouTube

<南シナ海を航行する米潜水艦を素早く補足し、水中のデータを瞬時に地上に送信する「新兵器」を中国が実用化>

アジア太平洋で中国がアメリカによる挑発的行為とみなす動きを封じ込め、自国の主張する領有権を死守しようとしている。中国政府が手にした最新の水中ドローンを使えば、米軍の潜水艦をこれまでにない速さで捕捉できるかもしれない。

中国国営の通信社である新華社は23日、中国政府が海洋環境に関するデータ収集を目的に、南シナ海の海底で無人潜水艦「海翼」12機を航行させたと報じた。高度な技術を搭載した海翼は従来のドローンより性能が高く、耐久性に優れ、燃費も向上したと記事は紹介した。水中で取得したデータを瞬時に地上に送信するという、アメリカも未到達の技術まで搭載したという。科学的な用途を前提にしており攻撃能力はないが、今後中国が領海と主張する海域を航行する米軍の潜水艦の居場所を瞬時に探知するのに利用される恐れがある。

【参考記事】「宇宙兵器」の噂もある米空軍の無人機、軌道飛行記録を更新中

アメリカの世界記録を破る中国

今回の探査航行の責任者は新華社に対し、「地上の実験室にリアルタイムでデータを送信できる」と語った。航行の成功は「間違いなく飛躍的な進歩だ」と語った中国のハルビン工程大学の水中音響技術部学部長の話も掲載された。

開発したのは、アメリカが打ち立てた潜水深度の世界記録を3月の試験時に破ったとされる、中国国営の中国科学院だ。海翼は水深6328メートルを超える海底を航行し、5170メートルというアメリカの世界記録を更新したと、中国科学院は発表した。中国の英字紙チャイナ・デイリーによれば、特殊な電池と塗料を用いることで、潜水時に60トン以上の水圧にさらされても機体を維持できる。2014年に30日間で連続航行距離1021キロを達成し、世界記録を出したという。すでに中国軍系のメディアは、中国軍が海翼を軍事利用することも可能だろうと推測している。

【参考記事】【動画】イスラエル発の「空飛ぶロボットタクシー」、初の自律飛行に成功

米外交専門誌ナショナル・インタレストによれば、昨年中国の軍事情報誌に、海翼に関するこんな記述があったという。「電池で動くため推進装置がなく、敵に探知されるような特徴のある音を出さない。この特性は、軍事分野で非常に重要な意味を持つかもしれない」

【参考記事】フィッシング専用ドローン PowerRay が釣りを変える!?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中