最新記事

米大統領

トランプ政権、就任後半年間の意外な高評価

2017年7月29日(土)17時20分
サム・ポトリッキオ(米ジョージタウン大学マコート校教授)

オバマケアの見直しをはじめ、移民規制でも税制改革でもトランプは後退を余儀なくされているが、一方で着実に実行した公約もある。オバマ前政権と国際主義・グローバリズム的傾向とは明確に決別すると、トランプは主張していた。この公約は間違いなく実現した。

まず、保守派のニール・ゴーサッチの最高裁判事就任だ。この人事は今後少なくとも20~30年間、政治的遺産として残る(最高裁判事の任期は終身)。トランプの保守的・ポピュリスト的思想は、トランプ政権の後も司法の最高レベルで影響を持ち続けることになる。

第2に、バラク・オバマ前大統領の主要な国際主義的政策をあっさり切り捨てた。トランプは大統領就任直後にTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」についても一方的に離脱を表明した。

最後に、カナダからアメリカに原油を運ぶキーストーンXLパイプラインの建設を認可し、大統領選の勝利に大きく貢献したウェストバージニア州の石炭産業復活を目指す大統領令に署名した。トランプ支持者は大喜びだ。現在、共和党支持層の大統領支持率は82%という驚異の高率に達している。

【参考記事】「トランプ大統領が命令すれば、米軍は中国を核攻撃する」米太平洋艦隊司令官

この結果、トランプは、2020年の大統領選で再選されるという最大の目的を達する可能性が高まっている。

最近の世論調査によると、いま大統領選があると仮定し、再びトランプとヒラリー・クリントンが候補者だとすると、43%対40%でトランプが勝つ。トランプの支持率は、昨年の大統領選投票日には37.5%だったが、今は平均して40%前後に達している。特に、大統領選で勝った郡では今も50%を上回る。米大統領選の選挙制度を考えると、この点は大きな強みだ。

要するに、自壊さえしなければ、トランプが2024年まで大統領にとどまる可能性はあると思っておいたほうがいい。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年8月 1日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部ガス施設に攻撃、冬に向けロシアがエネ

ワールド

習主席、チベット訪問 就任後2度目 記念行事出席へ

ワールド

パレスチナ国家承認、米国民の過半数が支持=ロイター

ビジネス

シンガポールのテマセク、事業3分割を検討=ブルーム
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 10
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中