最新記事

医療

神戸市が日本初のインパクト投資 保険指導に活用で医療費抑制へ

2017年7月20日(木)17時53分

7月20日、神戸市と三井住友銀行、社会的投資推進財団は、医療費抑制に向けた官民連携の新たな取り組みを始めると発表した。個人投資家から集めた資金などを原資に行政サービスを行い、相応の効果が現れれば投資家に還元する「社会的インパクト投資」と呼ばれる手法で、国内初の案件となる。写真は茨城で2015年3月撮影(2017年 ロイター/Yuya Shino)

神戸市と三井住友銀行、社会的投資推進財団は20日、医療費抑制に向けた官民連携の新たな取り組みを始めると発表した。個人投資家から集めた資金などを原資に行政サービスを行い、相応の効果が現れれば投資家に還元する「社会的インパクト投資」と呼ばれる手法で、国内初の案件となる。

今回の事業は、神戸市に住む糖尿病性腎症の患者100人を対象に、委託を受けた民間企業が食事療法などの保健指導を実施し、今後3年間の経過を観察する。事業費2426万円のうち、大半は財団や銀行が出資するが、残りは富裕層の個人投資家から資金を募る。

インパクト投資の中でも「ソーシャル・インパクト・ボンド」(SIB)という方法で、生活習慣の改善や重症化を予防できた場合、抑制できた医療費の一部を投資家への配当に充てる。効果が見られなければ配当は減り、最低保証額以上の行政負担は生じない。

糖尿病性腎症は、最も症状が重い「第5期」に入ると人工透析が必要になり、年間の医療費は約500万円と飛躍的に増える。透析が必要になる前の段階で食い止め、医療費の抑制や健康寿命の延伸につなげる狙いがある。

社会的投資推進財団の青柳光昌代表理事は、ロイターの取材に対し「医療費が約40兆円という中で、今回のような取り組みができると大きな財政的メリットが出る。公的コストの削減につながりやすい分野をさらに見定めていきたい」と述べた。

富裕層のマネーを取り込みつつ、社会的課題の解決を図るSIBは、欧米諸国が先行して取り入れている。財団によると、2016年7月時点での世界での実施事例は63件あるが、アジアでは韓国とインドで1件ずつと出遅れている。

(梅川崇)

[東京 20日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金融政策の具体的手法、日銀に委ねられるべき=片山財

ビジネス

全国コアCPI、10月は+3.0%に加速 自動車保

ビジネス

貿易収支、10月は2318億円の赤字 市場予想より

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米株安の流れ引き継ぐ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中