最新記事

出産

母子の絆をより強くするという「優しい帝王切開」 とは?

2017年7月12日(水)16時50分
モーゲンスタン陽子

帝王切開を奨励する試みではない

とはいえ、優しい帝王切開も手術であることには変わりないため、手術室での安全上のルールに従う必要はある。また、看護師の数を増やしたり、新生児担当者を手術室に入れたりといった変化もある。

6月3日〜5日にスイスのジュネーブで行われた欧州の麻酔学会ユーロアナスタジアにて研究発表したフェリシティ・プラット博士によると、優しい帝王切開には脊柱と硬膜外麻酔を混合することにより、下半身を十分麻痺させながらも上半身は子供を抱ける状態にしておくことが可能だという(CNN)。これは 初めから大量の麻酔を与えるのではなく、少量から始めて必要に応じて量を調節するからだという。

ロンドンのインペリアル・カレッジ・ヘルスケア・NHSトラストの麻酔学者であり、2008年に優しい帝王切開の論文を書いているプラット博士はまた、従来の帝王切開手術は母親を「受け身の患者」にしてしまうとも指摘(デイリーメール)。

アメリカでは、脊柱と硬膜外麻酔の混合は従来の帝王切開・優しい帝王切開にかかわらずすべての手術で用いられていると、この2年ほど優しい帝王切開を実行しているブライハム・アンド・ウィメンズ病院産科麻酔サービスのディレクター、ウィリアム・カマン博士は言う。とはいえ、一連の取り組みは帝王切開手術を受けなければならなくなった母親たちの体験をより満足のいくものにするための試みであって、決して帝王切開を奨励するものではないと、ハーバード医学学校でも教える同博士は強調する。

また先述のプラット博士は、2010年の時点では同手術の要素はイギリス全土の55%で可能だったが、おそらく現在はもっと多くの施設で可能だろうとデイリーメールに語っている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米ウクライナ、鉱物協力基金に合計1.5億ドル拠出へ

ワールド

中韓外相が北京で会談、王毅氏「共同で保護主義に反対

ビジネス

カナダ中銀、利下げ再開 リスク増大なら追加緩和の用

ワールド

イスラエル軍、ガザ市住民の避難に新ルート開設 48
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中