最新記事

軍事

日本の中期防衛計画、最大の敵は財政上の制約か

2017年7月3日(月)10時45分
辰巳由紀(米スティムソン・センター主任研究員)

防衛装備の「欲しいものリスト」は膨らみ続けるが Kim Kyung-Hoon-REUTERS

<防衛能力の目標を達成するためにはGDPの2%に増やしてもまだ足りない>

自民党の安全保障調査会(会長・今津寛元防衛庁副長官)は6月、次期中期防衛力整備計画(中期防、19~23年度)に向けた提言の中間報告を決定した。最終報告は18年春までにまとめる予定だ。

中間報告の主な注目点は2つある。まず、3月に自民党が政府に提言した「敵基地反撃能力」の保有に関する検討開始を改めて求めたこと。NATO諸国が防衛支出の目安をGDPの2%としている例を「参考に」、防衛予算の適切な水準を決めるべきだとも提言している。その他の優先課題として、早期警戒衛星の独自開発、自衛隊のサイバー攻撃能力にも触れている。

自民党の提言はこれまで、日本の防衛計画に関する2つの最重要文書、「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と中期防を改定する際に議論のたたき台として機能してきた。例えば、自民党が13年6月に出した提言は、現行の防衛大綱と中期防(13年12月決定)だけでなく、安倍政権の国家安全保障政策の方向性にも大きな影響を与えた。

13年の提言は国家安全保障会議の設立、安全保障基本法の制定、防衛政策の基礎となる「国防の基本方針」に代わる「国家安全保障戦略」の策定など、安全保障政策に焦点を当てたもので、多くは既に実現している。垂直離着陸機オスプレイや強襲上陸用車両(AAV)の導入など、装備面の提言の多くは現行の中期防に組み入れられた。

今回の中間報告も重要性は高い。次期中期防に向けた改定の大枠を決めることになりそうだ。

【参考記事】ロシアの極超音速ミサイル「ジルコン」で欧米のミサイル防衛が骨抜きに?

費用対効果が高いのは?

中間報告の背後に北朝鮮の脅威に対する懸念の高まりがあるのは間違いない。自民党内で強まっている、独自の防衛力強化を加速させようとするムードの反映という側面もある。アメリカは日本防衛へのコミットメントを繰り返し強調しているが、「取引」を好むトランプ政権の特質を考えると、アメリカの関与の持続性に対する懸念は根強くあるようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年

ワールド

ハセット氏、FRBの独立性強調 「大統領に近い」批

ビジネス

米企業在庫9月は0.2%増、予想を小幅上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中