最新記事

イタリア

脱ポピュリスト狙う伊五つ星運動 課題はユーロ離脱の国民投票公約

2017年6月22日(木)11時30分

6月20日、イタリアの反体制派政党「五つ星運動」は世論調査で高い支持率を得ており、来る総選挙での政権獲得に向けてポピュリスト(大衆迎合主義者)のイメージを払しょくし、外国人投資家や金融市場の信頼を勝ち取ろとしている。写真はカルラ・ルオッコ氏(右)ら運動の幹部。ローマで2016年11月撮影(2017年 ロイター/Remo Casilli)

イタリアの反体制派政党「五つ星運動」は世論調査で高い支持率を得ており、来る総選挙での政権獲得に向けてポピュリスト(大衆迎合主義者)のイメージを払しょくし、外国人投資家や金融市場の信頼を勝ち取ろとしている。

ただ、こうした努力の足かせとなっているのが、同党がユーロ離脱の是非を問う国民投票を実施すると約束していることだ。

選挙前にこの方針を撤回すれば他党、あるいは有権者もこぞって公約違反だと責めたてるだろう。逆に国民投票実施を掲げ続ければ、国際社会や市場から相手にしてもらえないというジレンマを抱えている。

五つ星運動はこうした苦しい立場を自覚しているようだ。有力幹部の1人であるカルラ・ルオッコ氏はロイターに対して国民投票は「交渉の手段だ」と強調。主要投資家や市場は「五つ星運動政権」がユーロ問題で本当に意図していることを、国民投票問題ときっちりと区別して理解できるはずだと説明した。

同党が求めているのはイタリアを含む経済状態がより低調な国を救うためのいくつかのユーロ圏のルール変更で、例えば欧州連合(EU)が定める財政赤字から公共投資を除外することや、域内の銀行不良債権を処理するための「欧州バッドバンク」創設などだ。

ルオッコ氏は「交渉の席に臨む際にはプランBを用意しなければならない。そして国民投票がわれわれのプランBだ」と語った。

ある五つ星運動の関係者は、これからは国民投票への言及をなるべく避ける作戦を立てたと漏らした。もっとも今月の世論調査結果では、五つ星運動支持者の58%がEUに好意的な見方をしていることが判明しており、同党が国民投票の公約を撤回しても支持者が失望しない事態もあり得る。

それでも五つ星運動の変わりようには驚かされる。わずか2年前には、同党は国民投票がイタリアの財政・金融面での主権回復にとって不可欠だと論じて、手続きを進めるために必要な署名を集めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、利下げ「近づく」と総裁 物価安定の進展

ワールド

トランプ氏、コロンビア大のデモ隊強制排除でNY市警

ビジネス

米イーベイ、第2四半期売上高見通しが予想下回る 主

ビジネス

米連邦通信委、ファーウェイなどの無線機器認証関与を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中