最新記事

サイエンス

タトゥーの色変化で健康状態をモニタリングする「究極のウェアラブル」をMITが開発

2017年6月20日(火)06時50分
松岡由希子

DermalAbyss: Possibilities of Biosensors as a Tattooed Interface-Vimeo

<米マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学医学大学院の共同研究プロジェクトは、最新のバイオテクノロジーとタトゥーの技法を融合した"究極のウェアラブル"の概念実証に成功した>

健康・ダイエット志向の高まりや、医療用デバイスの技術進化、スマートフォンの普及などを背景に、近年、ヘルスケアやフィットネスの分野において、ウェアラブル端末が注目を集めている。

リストバンドやアクセサリーのような形状の端末を身につけるだけで、心拍数や歩数、血圧、消費カロリーなどを自動的に記録し、健康状態を定量的に把握できるのが利点で、その市場規模は、世界全体で、2016年時点の53.1億ドル(約5,895億円)から年平均18.0%のペースで成長し、2021年までに121.4億ドル(約1兆3,475億円)に達すると見込まれている(市場調査会社『マーケッツ・アンド・マーケッツ』による)。

間質液の変動によって色が変わる

米マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学医学大学院の共同研究プロジェクト『ダーマル・アビス(DermalAbyss)』では、最新のバイオテクノロジーとタトゥーの技法を融合した"究極のウェアラブル"の概念実証に成功した。

血管と細胞との空間を満たす間質液の変動によって色が変わるバイオセンサーをタトゥーインクの代わりにし、その色の変化を健康状態のバロメーターとする仕組み。紫色からピンクに変化するpH値センサーや、青から茶に変わる血糖値センサー、蛍光の強度が変化するナトリウム値センサーなど、これまでに4種類のバイオセンサーについて研究されている。

DermalAbyss: Possibilities of Biosensors as a Tattooed Interface from Fluid Interfaces

体内の代謝をタトゥーの色で表わす『ダーマル・アビス』の仕組みは、医療分野において大いなる可能性を秘めている。

タトゥーの色で血糖値レベルがわかる

たとえば、従来、糖尿病患者は、血糖値を測定する際、皮膚に針を刺して採血する必要があったが、タトゥーの色をみるだけで血糖値レベルがわかり、インスリン投与が必要なタイミングを判断することが可能となる。同様に、ナトリウム値の変動が蛍光の強度の変化で示されることで脱水症を早期に発見したり、紫色からピンクまでの色の変化で体内のpH値の変動を可視化し、全般的な健康状態が把握できるようになるわけだ。

【参考記事】肺にまさかの「造血」機能、米研究者が発見

『ダーマル・アビス』では、現時点において、製品化に向けた開発や臨床実験をすすめる計画はないとのことだが、このタトゥー型バイオセンサーのような研究開発が増えるにつれて、現在の"身につけられる(ウェアラブル)"から"体内に埋め込める"へと、デバイスがさらに進化していきそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中