最新記事

米中関係

米政府、中国のハイテク企業投資を監視強化 AIなど軍事転用を懸念

2017年6月14日(水)10時30分

6月13日、米政府は国内ハイテク産業に対する中国の投資について、安全保障上重大とみなす技術を守るために監視を強化する構えだ。写真は2015年6月、米ネバダ州上空を飛行する米空軍のドローンMQ-9「リーパー」(2017年 ロイター)

米政府は国内ハイテク産業に対する中国の投資について、安全保障上重大とみなす技術を守るために監視を強化する構えだ。複数の現職の政府高官や元高官がロイターに語った。

特に問題となっているのは、近年中国が投資を増やしている人工知能(AI)や機械学習などの分野だ。米国で開発されたこれらの最先端技術が中国の手に渡ると、軍事転用されたり、戦略的な産業で米国が後塵を拝する事態をもたらすのではないかと懸念されている。

そこで米政府は今、外国による米企業への投資を安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の役割を強化する検討に入った。

ロイターが確認した国防総省の未公表リポートでは、中国が米国の監視態勢をかいくぐり、CFIUSが対象としていない合弁や少数株保有といった取引を通じて、重要技術を入手しつつあると警鐘が鳴らされている。トランプ政権のある高官は「中国の技術に対するどん欲さを踏まえ、米経済の長期的な健全性と安全に目を配るため、われわれはCFIUS(の役割)を精査している」と述べた。

マティス国防長官も13日の上院公聴会で、CFIUSは「時代遅れ」で、現在の状況に対応できるような改革が必要だと訴えた。

共和党のコーニン上院院内幹事の側近の1人は、コーニン氏がCFIUSの権限を大幅に強めて、一部の技術に関する外国からの投資を阻止できるようにする法案を策定中だと明かした。

この側近は「AIは中国が欲しがる最先端技術の1つで、軍事利用の可能性をはらんでいる。こうした技術は非常に新しいため、わが国の輸出管理態勢ではまだどのように捕捉すれば良いかが判然としていない。それが今の安全保障上の制限にある抜け穴を通じて技術が流出している一因だ」と説明した。

戦略国際問題研究所(CSIS)の軍事技術専門家、ジェームズ・ルイス氏も、米政府は制度の不備を補おうとしていると指摘。「中国側はわが国の技術移転についての保護措置をすり抜けるすべを発見し、それを使って経済と軍事の両面で優位に立とうとしている」と警戒感を示した。

ただ一部の専門家は、米国が規制を強化しても技術流出に歯止めをかけられない可能性がある上、中国からの報復を招いて経済的な打撃を受ける恐れがあるとみている。

調査会社ロジウム・グループによると、米国は昨年の中国による最大の直接投資先で総額は456億ドルに達し、今年1─5月も220億ドルと前年同期から倍増した。

ロジウムのエコノミスト、ティロ・ハネマン氏は「規制が行き過ぎれば、ハイテク業界が猛反発するだろう」と話した。

[ワシントン 13日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中