最新記事

中朝関係

中国は北朝鮮問題で得をしているのか?

2017年5月25日(木)08時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

一帯一路サミットフォーラム開幕スピーチで何度もつまずいた習近平国家主席 Jason Lee-REUTERS

トランプ大統領は北朝鮮問題を最優先課題の一つに掲げ、その解決を習主席に預ける代わりに、中国に対する為替操作国指定や南シナ海問題を先延ばしにしている。これにより中国が得をしているのか否かを検証する。

コラム「鈴木棟一の風雲永田町」に河井外交担当補佐官の意見が

5月25日付け(5月24日発行)の夕刊フジのコラム「鈴木棟一の風雲永田町」に安倍首相の外交担当補佐官である河井克行氏を取材した記事が載っていた。このコラムは今回で5608回を数え、政治ジャーナリスト・鈴木棟一氏のジャーナリスト魂には畏敬の念を覚える。いつも1000文字にまとめたコラムの切れ味は抜群で、文章のうまさには脱帽だ。

そのコラムが今回載せた河井氏を取材した論考は、内容が豊富で透明性があり、好感を以て読んだ。

ただ、最後にある河井氏が言ったという文章が気になった。そこには次のように書いてある。

――北京で開かれた「一帯一路」国際フォーラムの初日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、習氏が面目を失ったといわれるが本当にそうだろうか。北朝鮮が騒ぐことで、中国の価値が高まり、国益を米国から奪っている側面がある。

なるほど、そういう見方もあるのか、「面白い!」と思いつつも、何だか気になった。河井氏が述べた詳細を知りたい。そこで失礼を顧みず、執筆者の鈴木棟一氏に電話をかけさせて頂いて、河井氏の発言の意図を、もう少し詳細に教えてもらうことにした。

回答も明解。二つあるという。

一つ目:中国を為替操作国に指定するのを延ばした。

二つ目:南シナ海における「航行の自由」作戦をアメリカは今やっていない。

この二つによって、中国がアメリカの国益を奪っており、北朝鮮が騒ぐことによって社会の目は北朝鮮に向かうので、中国が得をする、ということを河井氏は言いたかったとのこと(と、鈴木棟一氏は説明してくれた)。

たしかに4月12日の米中首脳電話会談を終えた後だったか、「なぜ中国を為替操作指定国とするとした公約を撤回したのか」というウォールストリート・ジャーナルの記者の質問に、トランプ大統領は以下のように回答している。

――もし今、中国を為替操作国に指定すれば、北朝鮮の脅威に関する(米中間の)対話が危うくなる。今は北朝鮮問題の協力に集中する方が、為替操作国に関する公約を守るよりも、ずっと重要だからだ。

したがって「一つ目」に関する河井氏の懸念はその通りだと思う。

「二つ目」に関しては、どうだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン氏のガザ危機対応、民主党有権者の約半数が「

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週

ビジネス

マスク氏報酬と登記移転巡る株主投票、容易でない─テ

ビジネス

ブラックロック、AI投資で各国と協議 民間誘致も=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中