最新記事

スポーツメーカー

アディダス快進撃、サッカーや男性向けだけじゃない強み

2017年5月11日(木)16時50分
常盤有未(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

より「カスタマイズ」された商品を目指す

――ドイツで稼働が始まった「スピードファクトリー」は、提携するシーメンス社の技術やロボットを活用し、短納期で靴を生産すると聞く。どんなメリットがあるのか。また、アトランタに建設されることが決まったが、日本でも展開する可能性はあるのか。

ローステッド: 現在アディダスは(主にアジアなどの工場で生産し)1日約100万足の靴を販売している。スピードファクトリーの生産数は年間で100万足を想定しており、導入されたばかりのまだ新しいテクノロジーだ。

私たちが提案したい価値は価格ではなく(商品の生産サイクル短縮や3Dプリンタの活用により)洗練された高度な、カスタマイズされた商品を提供できるという点だ。スピードファクトリーを日本でやるかどうかは検討中だ。

toyokeizai170512-4.jpg

スピードファクトリーで目指すのは、よりカスタマイズされた商品を迅速に提供することだ(写真:アディダス)

――サッカーなど従来からの強みである領域に加えて、女性向け商品の強化も掲げている。

ローステッド:女性にフォーカスすることは大変重要であり、大きく伸ばせると考えている。アディダス全体では現状、女性向けカテゴリーの売上高比率は23%だが、2020年には28%まで増やすことを目標としている。チャンスは大いにあると感じている。

女性は男性と消費行動が異なる。男性は、憧れているスポーツ選手に影響されて購入する商品を決める傾向がある。女性はどちらかといえばブロガーやファッションモデルに影響されやすい。このように、女性の消費者をつかむために、アディダスも女性の管理職を増やしていく予定だ(2016年は30%)。

ハーディスティ:日本独自の取り組みとしては、2月から始まった、ファッションブランド「マウジー」とのコラボレーションがある。マウジーは若い女性向けで、かなり好調に推移している。

toyokeizai170512-5.jpg

ポール・ハーディスティ/1967年オーストラリア生まれ。ファッション関連会社のCFOを務めた後、1999年にアディダス入社。インドネシア、コリアなどの社長を歴任、2010年3月からアディダス ジャパン社長(撮影:尾形文繁)

女性向けは商品を作るだけではダメ

――日本では女性向けのスポーツ体験コミュニティ「MeCAMP(ミーキャンプ)」を立ち上げ、消費者参加型のイベントを定期的に開催している。

ローステッド:ミーキャンプはすごくいいと思う。ロンドンでも活性化策として、常設の女性専門スタジオを作った。地域の女性をターゲットとして、ヨガ、ランニング、フィットネスなどさまざまなプログラムを展開している。その地域向けにカスタマイズされたプログラムを提供することで、各都市でコミュニティを構築していきたい。

ハーディスティ:日本もミーキャンプだけではない。2月には女性専用のランニングシューズをリニューアルし、原宿に女性向けランニングステーションを期間限定で設置した。女性特有のニーズを取り込むために、商品と活性化策を1つのパッケージとして展開することが重要だ。

toyokeizai170512-6.jpg

女性がヨガなど、様々なスポーツを無料で体験できるコミュニティ「MeCAMP(ミーキャンプ)」。2017年は年間2000人の参加を目指す(記者撮影)

――2016年は主要市場で2ケタ増収となり業績が大きく伸びた。特に、米アンダーアーマーの台頭で苦戦が続いていた米国で勢いを取り戻せた要因は何か。世界首位の米ナイキをどう追っていくのか。

ローステッド:米国での成功はここ2~3年の話だ。今までは、欧州など他地域で展開していた商品をそのまま米国に投入していたためうまくいかなかった。徐々に米国向けに企画した商品を増やしたのが成功の一因になったのではないかと考えている。

米国で成長できたが、まだまだ満足していない。また、テニスのようにナイキとアディダスで1対1の試合をしているわけではない。毎年市場シェアと利益率を伸ばしていくことが最も重要なことだ。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中