最新記事

エリート社会

中国はなぜイバンカ・トランプに夢中なのか

2017年4月19日(水)21時30分
レベッカ・カール(米ニューヨーク大学歴史学教授)他

トランプ大統領就任式の翌日、ワシントン国立大聖堂に表れたイバンカと娘のアラベラ Kevin Lamarque-REUTERS

<生まれつき金持ちなことを恥じないイバンカの生き方は中国エリートのロールモデル、中国語で歌う白人娘のアラベラは中国の未来?>

北朝鮮問題や南シナ海の領有権問題をめぐり米中関係が緊張するなか、一般の中国人はもちろん中国の政治指導者をも魅了する意外な外交使節が表れた。ドナルド・トランプ米大統領の長女、イバンカ・トランプだ。

つい先日正式に政権入りしたイバンカは2月上旬、在米中国大使館で春節式典に出席した際、5歳の娘アラベラに中国語で新年の歌を披露させた。その動画が世界中を駆け巡ったのは記憶に新しい。4月上旬にフロリダのトランプの別荘「マール・ア・ラーゴ」で米中首脳会談が行われたときも、イバンカは中国の習近平国家主席夫妻の前でアラベラに中国語の民謡を歌わせた。



トランプの別荘で中国の歌を披露するアラベラと大感激の習近平夫妻


イバンカは、従来の大統領一家による外交儀礼を超えた領域で影響力を発揮している。「いつもはトランプに批判的な中国のコメンテーターでさえ、イバンカの話題になると敬意を払う。少なくとも表立った批判は控えている」と、米ニューヨーカー誌は指摘する。中国の一部ネチズンは、イバンカは独力で成功した女性の鑑であり、富裕な名家の子孫として一目を置く。

【参考記事】イバンカ政権入りでホワイトハウスがトランプ家に乗っ取られる

中国「イバンカ熱」の源泉

なぜイバンカが好きなのか。それはトランプ政権下の米中関係にどんな意味をもつのか。3人の識者に聞いた。

レベッカ・カール(米ニューヨーク大学歴史学教授)

イバンカは、中国のエリート層特有と思われてきたクレプトクラシー(権力者が国の富を独占すること)と縁故主義が、アメリカのエリート層にも同じようにはびこっていることを体現している。中国のいわゆる「伝統ある縁故主義」も「アメリカ版の縁故資本主義」も、もはや見分けがつかない。米政界は、今までクレプトクラシーと見られないように取り繕ってきた。だがそれもおしまいだ。イバンカは身をもって、アメリカがひた隠しにしてきた実情を世界に暴露した。

【参考記事】スカーレット・ヨハンソンが明かしたイバンカ・トランプの正体──SNL

自分の努力でなく立派な家柄出身というだけでトップに上り詰める人間に対して、嫉妬と尊敬の入り混じった気持ちを抱く文化は中国にもある。現代中国史において、家柄や社会階層をめぐって凄まじい政治闘争が繰り広げられてきたのは、単に毛沢東主義が暴走したためだけでなく、生い立ちがどれほど社会的な成功を左右するかを察して、持たざる人々が戦った証だ。アメリカも、政界や社会に蔓延する中国並みに汚い出来レースを前に、人々は絶えず壁にぶつかってきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル外相がソマリランドを公式訪問、ソマリアは

ワールド

日本との関係、対中関係と同じくらい重要=韓国大統領

ワールド

訂正-〔アングル〕長期金利27年ぶり高水準、10年

ワールド

イエメン分離派指導者が逃亡、リヤド行き便に搭乗せず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中