最新記事

シリア攻撃

トランプはロシア疑惑をもみ消すためにシリアを攻撃した?

2017年4月10日(月)16時11分
マクシム・トルボビューボフ(米ウッドロー・ウィルソン・センター/ケナン研究所上級 研究員)

「ある日我々はリビアを空爆し、民主主義で人々を救うために独裁者を排除した。翌日我々は、国が崩壊し人々が苦しむのを見た」と、トランプは2016年4月に語った。「我々は人道国家だ。だがオバマと(ヒラリー・)クリントン(元国務長官)の軍事介入が残したのは、弱さと混乱と無秩序だけだ」

もしシリアでのトランプがこの時と同じ考えで行動していたら、オバマと比較されていただろう。トランプの支持基盤のかなりの部分が、独裁者の虐殺者に屈した弱虫としてトランプを批判しただろう。

さらにアサドの狡猾なスポンサーであるロシアにも屈することになっていた。トランプ政権はロシア政府との間にあまりに疑惑が多過ぎて、世界の目前で民間人に化学兵器が使用されたのに何もしないとなれば、ロシア政府との間にやましいつながりがあったからだと思われてしまう。

トランプ政権のロシアとの関わりが明るみに出れば、これまでトランプが推進しようとしてきた政策どころの騒ぎではなくなる。ロシア疑惑の話を止めるのは、トランプ政権の最優先課題の一つだった。

最後に、トランプの支持率は先週は36%と、歴代大統領の就任1年目の数字として最低を記録した。

【参考記事】トランプ支持率最低、白人男性が逃げ出して

もし支持率が重要と思えば、指導者は何をしてでもそれを支えようとする。トランプとプーチンは二人ともこのタイプのようだ。ここ数年、プーチンは外交政策を使って国内の支持率を高めてきた。今は米露ともが、国内での支持をつなぎとめるために外交でリスクを冒している。

いまアメリカとロシアの間には、緊張をエスカレートさせる力が働いている。米露両国の指導者はどちらも自称実務主義者だが、実は二人とも激しやすく、弱く見られることを好まない。古典的な武力衝突パターンだ。

国際社会の分別ある指導者には、両国が対話路線に復帰するよう促す責任がある。

Maxim Trudolyubov is a senior fellow at the Wilson Center's Kennan Institute and editor at large of Vedomosti, an independent Russian daily. The opinions expressed here are solely those of the author.

This article first appeared on the Kennan Institute site.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中