最新記事

トルコ

トルコで警官9000人が停職処分 : クーデター未遂後の言論状況をジャーナリストたちが語る

2017年4月28日(金)19時50分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

トルコのメディア状況について話す新聞協会のハーマン氏(右) IJF

<独裁色を強めるトルコのエルドアン大統領は、自分に批判的な人々を弾圧している。トルコでその現場にいるジャーナリストたちが、日々の厳しい体験を語った>

昨年7月の軍関係者による クーデター未遂事件以降、トルコでは大量の国民が逮捕、解雇あるいは停職処分となっている(事件の概要については外務省の「内政」の項目を参照のこと)。BBCなどによれば、これまでに逮捕されたのは兵士、警官、教師、公務員などの約4万人。解雇ないしは停職処分を受けたのは12万人に達したという。人口約8000万人の国だが、万単位の逮捕、解雇や停止処分者の数に驚かない人はいないだろう。

これに追い打ちをかけるように、4月26日、トルコ警察は反体制勢力とつながりがあるとして警官9000人以上を停職処分とした。このほかに1000人以上が拘束された。

トルコのエルドアン大統領は、クーデター未遂事件には米国在住のイスラム指導者ギュレン師が背後にあると断定している(ギュレン師は否定)。今回の一斉検挙について、ソイル内相はギュレン派を対象としたと述べており、今後もこうした措置を続けるという。

現在非常事態宣言が敷かれているトルコで、言論の自由はどうなっているのか?

今月上旬、イタリア・ペルージャで開催されたジャーナリズム祭でトルコ人ジャーナリストたちがその状況を詳しく語った。「トルコ──ジャーナリストにとってのブラックホール」と題されたセッションの様子(議論の抜粋)を伝えてみたい。

session170428.jpg
「トルコのブラックホール」のセッション IJF

ヤブズ・ベイダー氏(トルコ出身、フランス在住):独裁国家になりつつある国でどんなことが起きるのか。トルコはその実験場になっている。それぞれのパネリストから状況を語ってもらいたい。

まずはトルコ在住のギュルシン・ハーマン氏だ。「国際新聞編集者協会(IPI)」のトルコ支部にいる。この支部長で理事の1人だったカドリ・ギュルセル氏は投獄中だ。今日(4月6日)で152日目となった。

トルコのジャーナリストは宙ぶらりん状態だ

ギュルシン・ハーマン氏:このセッションのテーマは「トルコ──ジャーナリストにとってのブラックホール」だが、実際にはトルコのジャーナリストは宙ぶらりんの状態に置かれている。

ちょうど1年前、ギュルセル氏はこのジャーナリズム祭に来ていた。「トルコではジャーナリストが殺されることはなくなった。今はジャーナリズムが殺されている」と発言した。

彼は152日間投獄されているが、起訴状が出たのはほんの2日前だ。内容は虚偽だ。彼も宙ぶらりんの状態だ。釈放されるかどうかは、トルコの政治状況によるからだ。16日には大統領の権限を強化する提案について国民投票がある(注:賛成派が勝利した)。ギュルセル氏は接見した妻に「私がここにいるのは、(反対勢力を抑える必要がある)国民投票があるからだ」と答えたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

レゾナック、1―9月期純利益は90%減 通期見通し

ビジネス

三越伊勢丹HD、通期純利益予想を上方修正 過去最高

ビジネス

日経平均は続伸、景気敏感株上昇 TOPIXは最高値

ワールド

米公民権運動指導者ジャクソン師、進行性核上性麻痺で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中