最新記事

マレーシア

南シナ海進出に態度を硬化 マレーシアは親中国、返上か

2017年3月9日(木)14時06分

マレーシアの態度硬化を裏付けるように、上級閣僚の1人はロイターの取材に対し、「領海侵犯には断固たる行動を取らなければならない。さもなければリスクが容認されたことになってしまう」と話している。

デリケートな問題だけに匿名を希望しつつ、この閣僚は、3月にマレーシアが見せた対応と、その数日前に隣国インドネシアで起きた同様の事件との対比を強調した。

「インドネシアの水域に侵入した中国漁船は、ただちに追い払われた。しかし中国の船舶がわが国の水域に侵入しても何も起きない」とこの閣僚は言う。

マレーシア議会では先月、副外相が他の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国と同様にマレーシアも中国の主張する悪評高い「九段線」を認めていないことを繰り返した。中国は「九段線」を掲げて、南シナ海の90%以上の水域について自国の権利を主張している。

限られたオプション

MMEA当局者の説明する事件について、中国外務省は、中国・マレーシア両国は対話と協議を通じた海事紛争の処理について「高いレベルのコンセンサス」を共有している、と述べている。

同省の華春瑩報道官は、「この件については引き続きマレーシアと緊密な連絡を取る予定だ」としている。

マレーシア政府がさらに強硬な姿勢を取ることに及び腰なのは、マレーシアが中国に大きく依存していることからある程度説明できるかもしれない。

中国はマレーシアにとって最大の輸出先であり、マレーシアはASEAN10カ国のなかで中国からの財・サービスの輸入が最も多い。

また複数の中国国有企業は昨年、マレーシアの政府系投資ファンド1MDBから数十億ドル相当の資産を購入している。1MDBは債務超過に苦しんでおり、ナジブ首相にとって大きな悩みの種になっていた。

マレーシアの国内問題への中国の影響力も、マレー人が多数を占める国家にとって常に懸念事項となっている。マレーシアの中国系住民は人口の約4分の1を数える。

昨年9月、中国・マレーシア両国の外交関係に緊張が走った。マレー系住民によるデモに先立って駐マレーシア中国大使が首都クアラルンプールにあるチャイナタウンを訪れ、「中国系住民の権利に影響するような行動に対しては、中国政府は遠慮なく批判させてもらう」と警告したのである。

大使は召喚され、発言について説明を求められたが、中国外務省は大使を擁護している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィリピン水兵、南シナ海で重傷 中国海警局が「意図

ワールド

中国首相、西オーストラリアのリチウム工場視察 財界

ビジネス

EU、「バーゼル3」最終規則の中核部分適用を1年延

ビジネス

ファンドマネジャー、6月は株式投資拡大 日本株は縮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サウジの矜持
特集:サウジの矜持
2024年6月25日号(6/18発売)

脱石油を目指す中東の雄サウジアラビア。米中ロを手玉に取る王国が描く「次の世界」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は「爆発と強さ」に要警戒

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    えぐれた滑走路に見る、ロシア空軍基地の被害規模...ウクライナがドローン「少なくとも70機」で集中攻撃【衛星画像】

  • 4

    800年の眠りから覚めた火山噴火のすさまじい映像──ア…

  • 5

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 8

    中国「浮かぶ原子炉」が南シナ海で波紋を呼ぶ...中国…

  • 9

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 10

    水上スキーに巨大サメが繰り返し「体当たり」の恐怖…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…

  • 5

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 9

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 10

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中