最新記事

日本企業

セブンプレミアムが「生鮮PB」を始めた理由

2017年3月14日(火)10時53分
又吉龍吾(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

「セブンプレミアム フレッシュ」にはバナナからサーモン、カナダ産の豚ロースなどが並んだ。スーパーの店頭で支持を得られるか(撮影:梅谷秀司)

流通王者が打ち出した新機軸は消費者に受け入れられるか――。

セブン&アイ・ホールディングスは3月9日、野菜や精肉、鮮魚など生鮮3品を主軸とする新PB(プライベートブランド、自社企画商品のこと)「セブンプレミアム フレッシュ」を展開すると発表した。バナナや豚肉、サーモンといった新商品を3月から順次発売する。

セブン&アイの井阪隆一社長は「従来PBは(低価格の)価格訴求型というイメージがあったが、われわれは品質重視、価値重視で商品開発を進めてきた」と強調する。こうした考えを今回の生鮮PBに反映させたという。

コンビニではなく、スーパーの店頭を中心に展開

たとえば、今回投入するバナナの商品名は「濃厚旨みバナナ」。バナナは高地で栽培するほど糖度が増すといわれる。そこでセブンプレミアムでは標高1000メートル以上の農園で栽培されるものに限定。価格は一房321円(税込、以下同)と決して安くはないが、「味と価格のバランスがとれていれば(消費者に)受け入れられる」とセブン-イレブン・ジャパンの石橋誠一郎・商品本部長は自信を示す。

それ以外にも「カナダポーク」という豚ロースは、小麦を多めに配合した独自の飼料を使うことで肉質が締まり、品質が向上している。価格は100グラムで159円。この肉で作られたトンカツは、冷めても柔らかさを保っているのが印象的だった。

toyokeizai170314-1.jpg

こだわりの豚ロース「カナダポーク」もお披露目された(撮影:梅谷秀司)

実は、今回投入する生鮮PBはコンビニをメインとしていない。イトーヨーカドーやヨークマート、ヨークベニマルといったセブン&アイ傘下の総合スーパーや食品スーパーを中心に展開する。

セブンプレミアムはコンビニや総合スーパー、百貨店などグループを横断する商品として開発されてきた。ただ、実態としてはコンビニでの販売構成比が圧倒的に高く、売上高の約75%をコンビニが占める。

そのため「スーパーなどに足を運ばれる、年齢の高いお客様へのブランドの認知ができていなかった。そうしたターゲットに向け、生鮮のPBに挑戦した」(石橋商品本部長)。

さらに、苦戦するイトーヨーカ堂のテコ入れも狙っている。同社は2016年度の営業損益が2期連続の赤字となる見通し。堅調だった食品もここにきて伸び悩んでいる。一般的にPBはNB(ナショナルブランド。一般メーカーの商品)に比べて採算がよい。取り扱い品目を増やすことで、ヨーカ堂の収益回復につなげる構えだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中