最新記事

スマートフォン

アップルがいまiPhone「レッド」を出す3つの理由

2017年3月28日(火)16時15分
松村太郎(ジャーナリスト)※東洋経済オンラインより転載

(RED)の収益の100%が、グローバルファンドに寄付され、エイズウィルスの母親から子供への感染撲滅を目的とした活動に使われている。2006年から4億6500万ドルを集めたが、そのうち1億3000万ドル以上が(RED)によるものだ。

(RED)によると、2005年にHIVに感染して生まれてくる子供の数は毎日1200人だったが、こんにちは400人にまで減少させることに成功し、この数字を近い将来、ゼロにすることができるとしている。

(RED)の赤い製品は、エイズ撲滅運動を広めることになっているが、ユーザーからすると、真っ赤なモデルが欲しいという、慈善活動とは異なる動機での購入が大半になるのではないだろうか。その点で(RED)は、小売りビジネスにおける、1つの成功したキャンペーン事例と見ることができる。

さて、アップルはなぜこのタイミングで、iPhone 7に対して新しいモデルを追加することになったのか。

前述の国際エイズデーのキャンペーンに合わせるのであれば、2016年12月にREDモデルのiPhoneをリリースするのが自然だったのではないだろうか。なぜ2017年3月なのだろうか。

このことについて考える上で3つのポイントを指摘したい。

iPhone 7赤モデルが今登場する3つの理由

1点目は、iPhoneが品薄だったことだ。

2016年9月の発売以降、米国でのiPhoneの状況をチェックしていたが、特に5.5インチサイズのiPhone 7 Plusは品薄状態が続いてきた。そのタイミングで新色を投入しても、思うように製品を供給できなかったとみられ、また「やっぱり赤がいい」と予約を変更する顧客の対応にも問題が生じることが考えられた。

2点目は、3月リリースの成功だ。

アップルは2016年3月にiPhone SEを投入した。当時の最新モデルであったiPhone 6sと同等のスペックを、iPhone 5sと同じ4インチボディに搭載した製品で、小さなサイズを好むユーザーと価格の安さから、成功した製品となった。

アップルは今回の発表のタイミングで、iPhone SEの保存容量を16GB・64GBから、32GB・128GBへと倍増させ、価格を据え置いたアップデートを施している。16GBのiPhoneについては、スマートフォンの体験が満足にできないとの批判があり、米国では訴訟が起きるなど問題になってきた。

iPhoneのメジャーアップデートから半年のタイミングでの新製品投入は、顧客の注目をiPhoneに向けておくことに加え、真っ先に購入しなかった人に対して多くのオプションを与える点で、ホリデーシーズン偏重だったiPhoneの製造と販売をならす効果を期待できる。

3点目はスペックからスタイルへの移行だ。

これはスマートフォン市場をアップルの得意分野に引き込む狙いがある。スマートフォンのスペックはまだまだ進化の一途を辿ることが予測できる。特にバッテリー技術については、多くの人々がさらなる性能の向上を望んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中