最新記事

ベネズエラ

ベネズエラへ旅立つ前に知っておくべき10のリスク

2017年3月14日(火)19時24分
野田 香奈子

ベネズエラの状況をその他の南米諸国での治安の悪さの延長として考えることは、ベネズエラにおけるリスクの過小評価につながります。

ではベネズエラのリスクとは何なのか?
簡単にいえば、社会にルールが存在しないことです。無法地帯なのです。

(↑略奪に参加する国家警備隊)


1. 外出

多くのベネズエラ人は身を守るため、むやみに外出するのを控える、移動には車を使う、ということを徹底しています。

昨年、長年住んだベネズエラを離れた小谷さんはこう言います。


個人的には40年近く住んでコソ泥以外恐ろしい目に遭ったことはないが、家の周りは有刺鉄線を巡らせ、警報機、番犬のほか、必ず誰か留守番を頼んでいる。外出する時は目立たない恰好に運動靴、最低限の物だけを身に付け、行く場所の状況をTwitterで調べ、用事を済ませると一目散に帰宅する。それだけでも精神的にくたくたになった。治安が帰国した一番の理由だった。


世界で最も危険な都市と言われるカラカスですが、今でも若者が夜にパーティーなどをしているのは事実です。彼らは、例えば休日前は外出しない、予備の携帯を用意する、携帯は持ち歩かないなど身を守るための持論を展開していますが、内心、それがただの気休めで、自分に嘘をついているだけだとわかっています。安全ではありません。


【参考記事】崩れゆくベネズエラ ── 不穏な政治状況、物不足と連日の襲撃事件


2. 国境付近

国境は武装した組織犯罪集団(軍、国家警備隊、ギャングなど)がいるため、概して危険です。

港では軍が食料の密輸などを大規模に行っており、空港では強盗が頻繁に起きています(昨年カラカスの空港で強盗に抵抗して殺されたエジプト人ビジネスマンがいました)。

コロンビアとの国境はガソリンや麻薬の密輸を行なう軍やギャングのテリトリーです。
ククタからの出入り口タチラ州は2014年以降、引き続き頻繁に反政府派の抗議運動が起きており、軍の出動、道路の閉鎖死傷者が出るような衝突がしばしば起きていて、政治的に不安定です。

近年は頻繁にコロンビアとベネズエラの国境が閉鎖されています。

一方、ジャングルの近くでは、食料不足の影響で、違法で危険な金の密採掘に参加する人が増えています。1年前のトゥメレモの虐殺事件では、20名弱のバラバラ死体が発見されました。採掘にはギャングだけでなく軍も関わっているという噂で、詳細は不明のままです。当時はこの影響で、国境付近の街からカラカスへ通じる一部道路が閉鎖されました。
またこれらの貧しい採掘者がジフテリアの感染源の一つになっており、薬不足と食料不足から貧しい子供たちが命を落としています。

またブラジルとの国境では、生活苦や薬不足から違法にブラジル入りする人が後を経たず、ブラジル側の医療対応が困難になるなどの影響が出ています。

このような中で、国境はいつまた閉鎖されるかわかりません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中