最新記事

ベネズエラ

崩れゆくベネズエラ ── 不穏な政治状況、物不足と連日の襲撃事件

2016年6月8日(水)08時15分
野田 香奈子

警官隊の前で「ベネズエラSOS、人道主義の危機」と書いたプラカードを掲げる女性(2016年 ロイター/Carlos Garcia Rawlings)

 ここのところベネズエラは大きく揺れています。

 大統領罷免選挙を求める野党、それを妨害するマドゥロ政府、さらに軍事クーデターの噂という不穏な政治状況に加え、物不足、食料不足、薬不足は深刻の一途をたどっており、ここ数日は毎日のようにベネズエラ各地で襲撃事件が起きています。

 このような中で、ベネズエラに世界の注目が集まりつつあります。そして、それに呼応するように、ベネズエラの全体像を紹介する優れた記事も多く出でてきています。今回は、ベネズエラの現状を知るための注目の記事をいくつか紹介します。

悲惨な医療事情

ニューヨークタイムズで公開されたベネズエラの医療問題に関する衝撃的なレポートは、社会主義革命の目玉である「すばらしい医療制度」の幻想を打ち砕き、おぞましい現実を理解するには十分すぎるでしょう。


 ベネズエラの医療の実態はまさに地獄です。

 この記事によると、病院には抗生物質もなければ、点滴液も、包帯も、痛み止めもない。そもそも紙がない。怪我していても眠るためのベッドも病院には足りない。メリダの病院では、手術台の血を洗い流すための十分な水すらなく、飲料用の炭酸水で洗っている。安価な備品すらなくて、簡単な手当てが受けられなかったせいで赤ちゃんが次から次へと死んでいく。

 私のカラカスに住む知り合いにも、先日、緊急で盲腸の手術を受けたものの、術後の抗生物質と痛み止めがなく、激しい痛みの中で感染症に怯えるという恐ろしい体験をした人がいます。

 医療費無料と謳われる実態は悲惨な公立の病院を避けるのはマストとして、いざとなれば多少の額を払って私立クリニックに行けばなんとかなる...はずだったのは、過去の話。今では私立クリニックですら、施設の不備(設備が壊れても交換できない、備品や薬が入手できない)や薬品不足は深刻です。

 ちなみに、先日、そのメリダのロスアンデス大学の医学部で抗議があり、当局と抗議参加者が衝突、武装した警察などが介入、負傷者も出た模様です。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

お知らせ=重複記事を削除します

ビジネス

英中銀の年内利下げ観測後退、ゴールドマンやモルガン

ワールド

EU、ロシア産LNG禁輸を1年前倒しへ 制裁第19

ビジネス

三井住友FG、米ジェフリーズに1350億円を追加出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中