最新記事

アメリカ政治

オバマ、記者団に別れ「まだ世界の終わりではない」

2017年1月19日(木)17時00分
ロビー・グラマー、エミリー・タムキン

 オバマはトランプの親イスラエル政策をやんわりと牽制。アメリカは長年にわたり中東和平の実現に向け仲介努力を行ってきたと語った。2つの国家の平和的な共存に合意するよう「当事者たちに強いることはできない」が、イスラエルとパレスチナが合意に至らなければ、「この問題は解決できない。イスラエルが民主的なユダヤ人国家であり続けようとするなら(パレスチナ人国家と共存するしかない)。もう1つの選択肢は何らかの形で入植地を拡大し、1つの国家を目指すことであり、そうなれば何百万もの人々を抑圧することになる」

 トランプとトランプが駐イスラエル大使に選んだデービッド・フリードマンは、パレスチナ自治政府も将来の首都に望んでいるエルサレムに在イスラエルのアメリカ大使館を移転すると主張するなど、極端にイスラエル寄りの姿勢を打ち出している。オバマは「われわれの行動は非常に大きな影響や予期せぬ結果をもたらす」と次期政権に訴えた。「われわれの新しい大統領がこれまでの政策を検証し、練り直すのは正しいし、適切なことだと思うが、熟慮の上で決断してほしい」

 移民、性的マイノリティーの権利、人種差別などについても、オバマは「われわれの核心的な価値」を守るよう次期政権と国民に訴えた。アメリカで育った不法移民の子供を強制送還することやマイノリティーに対する組織的な差別は、中心の価値観に反する行為だと、オバマは語り、人種差別や警察の強引な取締り、有権者登録の妨害といった問題と「取り組む必要がある」と力を込めた。

「幸運を祈る」

「(黒人差別の州法)ジム・クロウ法や奴隷制にまで時を逆行するような差別意識があり、参政権の制限を黙認するような風潮もある」と、オバマは訴えた。「これはアメリカが最善に機能する形ではない。誰もが投票できる制度を保証するため、この問題にもっと関心を寄せてほしい」

 トランプ就任を前にアメリカの価値観を改めて強調したオバマだが、アメリカの未来を悲観しているわけではないとも語った。

 会見の終り近くには、トランプが就任しても世界が終わるわけではないと言い、「世界の終わりと言えるのは、世界の終わりだけだ」と、記者たちの不安をなだめた。

 質疑応答を終えると、オバマは記者団に感謝し、「幸運を祈る」と言って演壇を下りた。それは記者たちだけでなく、アメリカ全体に向けられた言葉のようだった。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ、鉱物協力基金に合計1.5億ドル拠出へ

ワールド

中韓外相が北京で会談、王毅氏「共同で保護主義に反対

ビジネス

カナダ中銀、利下げ再開 リスク増大なら追加緩和の用

ワールド

イスラエル軍、ガザ市住民の避難に新ルート開設 48
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中