最新記事

自動車

フォード工場建設撤回、メキシコ経済へのリスク浮き彫りに

2017年1月9日(月)19時58分

 1月6日、米自動車大手フォード・モーターが、メキシコ中部サンルイスポトシ州に16億ドルを投じて工場を建設する計画を撤回したことで、トランプ次期米大統領が掲げる政策がメキシコ経済に及ぼすリスクが浮き彫りになった。写真は工場の建設予定地、4日撮影(2017年 ロイター/Christine Murray)

米自動車大手フォード・モーターが、メキシコ中部サンルイスポトシ州に16億ドルを投じて工場を建設する計画を撤回したことで、トランプ次期米大統領が掲げる政策がメキシコ経済に及ぼすリスクが浮き彫りになった。

また、顧客基盤の拡大を期待していた関連する部品供給業者の間でも驚きが広がっている。

米ゴム化合物メーカー、プリファード・コンパウンディングの現地法人幹部は、多くの自動車部品メーカーがサンルイスポトシ州のフォード新工場の操業を見込み、事業拡大に乗り出していたと指摘。同州産業の自動車業界への依存度は「優に70%」に達しているという。

同幹部は「(フォードの撤回の決定は)地元経済に大きな影響を及ぼすだろう」と語った。同幹部によると、地元経済に及ぼす影響は今後5年間で数十億ドルに達する可能性すらある。地元当局者はフォードの決定が及ぼす経済的な影響をなお分析していると明らかにした。

トランプ氏は通商関係を刷新し、米国に雇用を取り戻すと宣言しており、メキシコ経済が被る打撃は今回が始まりにすぎないかもしれない。

フォードは今回の撤退理由について、同州でも製造を予定していた小型車に対する需要が北米で減退していることを挙げた。ただ、トランプ氏は昨年11月の大統領当選の数カ月前から、メキシコ事業に関してフォードを激しく批判していた。

トランプ氏は5日には、トヨタ自動車<7203.T>のメキシコ新工場から米国に輸出される車両を対象に「国境税」を課すと警告。トランプ次期政権のメキシコ産業に対する全面攻撃を巡る懸念が高まっている。

フォードの建設撤回を受け、同社の工場建設予定場所は既に、経済的な約束を失った不毛の地と化している。油圧ホース請負業者のフェルナンド・ロサレスさん(28)は「今や墓地のようだ」と話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中