最新記事

日露関係

日ロ首脳会談、領土問題は共同経済活動の交渉開始のみ合意

2016年12月16日(金)19時40分

12月16日、安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は午後、東京の首相官邸に場所を移して2回目の首脳会談を開いた。主に経済協力について協議する。山口県長門市で撮影。提供写真(2016年 ロイター)

 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は16日、2日間にわたる首脳会談を終え、60以上にわたる経済協力事業を進めることで合意した。

 一方で、日本が最重要課題に位置付ける領土問題に関連して一致したのは、4島における経済共同開発に向けた交渉の開始のみ。まずは両国の信頼を醸成し、その上で領土問題の解決と平和条約の締結につなげようというもので、ようやく出発点に立った格好だ。

 15日に安倍首相の故郷の山口県長門市で、16日に東京の首相官邸で会談した両首脳は、択捉、国後、色丹、歯舞の4島での共同経済活動に向け、交渉を開始することで合意した。漁業や養殖、観光、医療などを想定し、法的立場が侵されないことが前提とする日本、自国の法律に基づき実施するとしているロシア双方の主張に沿う特別な制度を検討する。

 16日午後の共同会見で公表した声明には、共同経済活動と平和条約締結を結びつける表現を盛り込んだ。安倍首相は「互いにそれぞれの正義を何度主張しあっても解決できない」としたうえで、「新しいアプローチ、未来志向のアプローチこそが最終的な結果に結びつく道と確信している。平和条約締結に向けた重要な一歩だ」と語った。

 プーチン大統領は共同会見で経済協力について多くの時間を割きつつも、平和条約についても言及。「共同経済活動のための特別な制度というメカニズムのもと、最終的な平和条約締結に近づけるようにもっていくことが大事だ」と語った。

 しかし、共同経済活動に向けて交渉し、実際に活動を始め、信頼関係を十分に構築した上で領土問題を含む平和条約を締結するには相当の時間を要することが予想される。安倍首相は「領土問題の解決にはまだまだ困難な道は続く」と述べた。

 国際政治が専門の拓殖大学の川上高司教授は「まさに入口に立ったというところ。時間はかかるだろう」と指摘。一方で、「それほど時間はない。安倍首相とプーチン大統領がいるうちに解決する必要があるし、米国とロシアが接近する前に話をどんどん進める必要がある」と語った。

[東京 16日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物価目標の実現「着実に近づいている」、賃金上昇と価

ワールド

拙速な財政再建はかえって財政の持続可能性損なう=高

ビジネス

トヨタの11月世界販売2.2%減、11カ月ぶり前年

ビジネス

予算案規模、名目GDP比ほぼ変化なし 公債依存度低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中