最新記事

テクノロジー

オバマ大統領も参加した、ホワイトハウスの人工知能戦略会議とは?

2016年11月2日(水)06時15分
ライアン・マシュー・ピアソン ReadWrite[日本版]編集部

 科学技術における主要な分野でのイノベーションを推進するため、オバマ大統領はピッツバーグで一日だけの「ホワイトハウス・フロンティアカンファレンス」を開催した。このカンファレンスは、ホワイトハウス、ピッツバーグ大学、カーネギーメロン大学によるジョイント・ベンチャーである。

 カンファレンスにおいて、大統領はいくつかの新たな構想について語った。それらには、スマートシティや脳科学、健康、刑事司法、宇宙開発、気候の変動に関する活動を助成する出資が含まれている。そして、これらと並んで紹介されたものが、「人工知能の未来に備える」と題されたレポートの発表だ。

 58ページにも渡るそのレポートには、人工知能に関するいくつかの重要なトピックとその概要が記載されている。また、人工知能の歴史についても触れられており、AI技術の現状と展望について述べられている。

 レポートで触れられているトピックは、以下の通りだ。

  ・公共利益のための人工知能の活用について
  ・人工知能とその規制について
  ・研究とそのための人員について
  ・人工知能が経済に与える影響について
  ・安全性と管理について
  ・世界的な観点で考慮すべき点と安全性について
  ・人工知能の未来に備えるために


=====


ホワイトハウス・フロンティアカンファレンス オバマ大統領も参加したホワイトハウス、ピッツバーグ大学、カーネギーメロン大学による会議

 人工知能は官民問わず重要なテーマである。ビジネスや科学、法の執行や国家の安全保障にいたるまで、データに基づいた知見を迅速に導き出すため用いられるようになるだろう。我々は、ビッグデータの渦中におり、これらのデータは今後ますます人の手に負えないような規模にまで膨れ上がっていくからだ。

 人工知能は、整理されてない大量のデータを利用価値のある知見に即座に変える力をもつ。これこそが、クライアントのことをより深く知りたい企業だけでなく、公共向けの分野においても人工知能が有用であるゆえんだ。レポートによれば、人工知能はすでに社会に影響を及ぼしているという。

 官民での人工知能に関する基礎および応用研究開発への投資効果は、すでにヘルスケア、交通、環境、刑事司法、経済的な分野で現れてきているのだ。

規制の法整備が最優先課題

 今、公共の安全のために用いられる人工知能に対し、規制強化が求められている。たとえば、人工知能を使って障害物を避けたりハンドルを切ったりするAI搭載自動運転車の場合、これは隅々までテストされ、高度な安全基準を満たさなければならない。

 さらに、現在自動化されてない他の仕事についても、人工知能があれば人の介在は少なくなる。これは、短期的かつ直接的な影響を世界経済に与える。レポートでは、人工知能が熟練した労力を作り上げるのにどう役立つか、人工知能が取って代われるものとしてはどのようなものがあるか、について模索している。

 また、セキュリティおよび安全面も考慮すべき要素の多い重要な分野の一つだ。MITの研究者たちは、人工知能がサイバー攻撃を人間の能力を超えた速さでリアルタイムに検知できることを明らかにした。この発見は、サイバー攻撃やハッキングが大きな脅威となっている現代において人工知能の大きな存在価値となる。

 人工知能は決して夢物語ではない。すでに存在し、日々進化を遂げている。映画「ターミネーター」で描かれた人類を攻撃する人工知能"スカイネット"はまだ現実のものではないが、我々はより「コネクテッド」で「インテリジェント」な世界を垣間見ているところだと言えるだろう。

footerlogo.png
ReadWrite[日本版]編集部

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中