最新記事

韓国

朴大統領、弾劾も覚悟の居座り 韓国検察はチェ・スンシルらを起訴

2016年11月20日(日)20時28分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 また、大統領府も検察の発表に対して批判する反応を見せた。ジョン・ヨングク大統領府報道官は20日午後に報道陣に対して、「むしろ憲法上・法律上の大統領の責任の有無を明確に選別できる合法的手順に従って一日も早くこの議論が終結されることを願う」と述べた。事実上、国会の弾劾訴追手続きを促したものと見られる。「合法的手続きが弾劾を意味するのか」という質問にチョン報道官は、「言葉通り理解してほしい」と否定しなかった。

 これは国会で弾劾訴追案が議決されても、憲法裁判では勝算があるという大統領府の判断である。この日チョン報道官が「朴大統領は、今後も国政に疎かが生まれないように謙虚な姿勢で、すべての努力を尽くしていく」と朴大統領の国政遂行意志に変わりがないことを重ねて強調したのも、このような勝算があるからだろう。

 国会が朴大統領を弾劾訴追しても、憲法裁が、これを受け入れる公算は大きくないのが現実だ。韓国の憲法第65条によると、憲法裁で弾劾を決定するためには、裁判官6人以上の賛成がなければならない。しかし、現在の憲法裁判官9人のうち6人が、セヌリ党などの推薦を受けた保守系の裁判官である。2004年に故ノ・ムヒョン前大統領の弾劾を却下したことから分かるように、憲法裁は大統領弾劾要件を厳しく解釈する傾向がある。

 今後は、朴大統領側が対面取り調べにどうしても応じない場合、検察が強制捜査に踏み込むか、また朴大統領がこうした事態に対して国民への新たな談話を発表するか、さらに国会で与野党が協力して挙国一致内閣を立てて、朴大統領が権限を内閣に委譲するか、が、大きなポイントになりそうだ。

 北朝鮮のミサイル発射や、それに対抗するためのTHAADミサイル配備、そして鳥インフルエンザの発生など、さまざまな問題を抱えている韓国。本来は国政の停滞は許されない状況だが、現状ではレームダックとなった朴大統領がそのまま居座り続ける可能性が高く、内政、外交ともに動きが取れ状態が続きそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用統計、4月予想上回る17.7万人増 失業率4

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中