最新記事

韓国

朴槿恵にとどめを刺せない韓国左派の事情

2016年11月18日(金)10時30分
クリストファー・グリーン

Yonhap-REUTERS

<大スキャンダルに見舞われた韓国の朴槿恵政権は求心力が低下するばかり。それでも「即時辞任」となると、左派政党側にとっては都合が悪い>(写真:韓国左派は朴槿恵のスキャンダルを追及するが)

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、親友の国政介入疑惑に端を発した一大スキャンダルで求心力が弱まる一方だ。彼女の意思決定には、今となっては何の権威も政治的影響力もない。朴に辞任を求める国民の声は、日増しに高まっている。

 しかし、もし「即時辞任」となったら、左派政党側にとって非常に都合が悪い。もちろん当事者たちも、その点は百も承知。朴政権をひっくり返す可能性が十分あるだけに、より慎重な出方を探っている。

 野党側が朴の即時辞任、つまり直近の大統領選を望まない理由は2つある。まず、左派系の大物大統領候補者があまりに多過ぎる点だ。

 前「共に民主党」代表の文在寅(ムン・ジェイン)や「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)共同代表、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長、李在明(イ・ジェミン)城南市長、安熙正(アン・ヒジョン)忠清南道知事など、当選を十分に狙える面々がずらりと並ぶ。さまざまな世論調査で健闘している彼らだが、候補者の絞り込みについては意見の一致は得られていないようだ。もし大統領選がすぐに実施されれば左派は分裂に陥り、保守陣営の候補が勝利をつかむだろう。

【参考記事】[動画]韓国100万人の退陣コール 朴槿惠大統領、週明けに検察が聴取へ

 もう1つの理由は、今回の大スキャンダル後も左派政党への支持がそれほど高まっていないことだ。

 ギャラップ・コリアの世論調査によれば、与党セヌリ党の支持率は34%から18%に下落し、朴自身の支持率は33%から5%へと急落した。しかし同じ時期に「共に民主党」は7ポイント、国民党は1ポイントしか支持率を伸ばしていない。

 セヌリ党離れした有権者は「支持政党無し」の状態にある。もしスキャンダルが収束したり、今日が投票日だとすれば、保守派に戻って票を投じるはずだ。

 冷静に考えるなら左派は、次の大統領選が予定される来年12月まで朴を大統領府にとどめ、国民の不満のはけ口として利用するのが賢明だ。早過ぎる大統領選は、彼らにも都合が悪い。

From thediplomat.com

[2016年11月22日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英米が420億ドルのテック協定、エヌビディア・MS

ビジネス

「EUは経済成長で世界に遅れ」 ドラギ氏が一段の行

ビジネス

独エンジニアリング生産、来年は小幅回復の予想=業界

ワールド

シンガポール非石油輸出、8月は前年比-11.3% 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中