最新記事

2016米大統領選

ドナルド・トランプが米既成政治に逆転勝利

2016年11月9日(水)19時52分
マシュー・クーパー

大方の予想を覆して米大統領選に勝利したトランプ Carlo Allegri-REUTERS

<ほとんど誰も予想していなかったトランプの大統領選勝利は、アメリカの既成政治を根本的に変えてしまうほど大きな衝撃をもたらした>

 ワシントンの既成政治に猛省を迫る驚くべき逆転劇で、ドナルド・トランプはアメリカ合衆国第45代大統領に選出された。

【参考記事】「トランプ勝利」世界に広がる驚き、嘆き、叫び

 思えばアメリカの政治を大きく変質させるトランプの試みは、前回の大統領選前にバラク・オバマの出生地がアメリカ(ハワイ)ではなくケニアではないのか、と根拠もなくクレームをつけたときから始まった。そして、今回の大統領選は泡沫候補扱いから始まり、大番狂わせで共和党の予備選を制し、今日は遂に、大半の世論調査で大差の勝利を予想されていた民主党候補のヒラリー・クリントンまで打ち破った。トランプは自由貿易に反対し、合法・不法を問わず移民を大幅に減らし、「バカげた」戦争を終わらせると豪語するナショナリストだ。トランプ大統領の誕生は、過去数十年ワシントンで主流だった民主・共和両党の合意に基づく政治から、アメリカ政治が根本的な変質を遂げることを意味する。

【参考記事】トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実
【参考記事】「トランプ大統領」を誰より危惧するイスラム教徒の不安

政治も軍隊も未経験

「既成政治のアウトサイダー」という売り言葉どおり、70歳のトランプは政治経験と軍隊経験をまったく持たないアメリカ史上初の大統領となる。その代わり、自分は成功した実業家であり、雇用創出のノウハウもあり、政治家に献金する企業の動機が政治操作であることも熟知していると主張してきた。

 来年1月の就任時点で、彼は最年長の新大統領となる。また、ジョン・アダムズ以来初の外国生まれの伴侶を持つ大統領となり、3回結婚した史上初の大統領、そしておそらくは歴代で最も裕福な大統領となる。不動産王の息子として生まれ、父親譲りの事業をグローバルに拡大、テレビのパーソナリティーとして顔を売り、自分の名前を冠したさまざまな商品の売り込みを精力的に行ってきた。

【参考記事】トランプ旋風を生んだ低俗リアリティ番組「アプレンティス」

 本人によると、個人資産は100億ドルに上るというが、実際はその3分の1、あるいはさらに少ないとの見方もある。大統領選の候補者は確定申告書を公開する長い伝統があるが、彼はこれに抵抗してきた。就任後には、手広く展開してきた事業は子供たちに継がせるつもりだと言っている。

 大統領になれば、議会の反対を押し切って北米自由貿易協定(NAFTA)、世界貿易機関(WTO)、さらに批准待ちのTPPから脱退する権限を持つことになる。米軍の最高司令官として、外国に駐留する部隊を撤退させることも増員することも可能だ。移民政策についても、合衆国憲法に基づき、大きな決定権を持つ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=大幅上昇、ナスダック約4%高 中東の

ワールド

EU、22年のエネ危機対策の復活検討 イラン戦争受

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、「有事の買い」一服

ワールド

米国人女性ジャーナリスト誘拐、バグダッド 捜索続く
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 5
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 10
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中