最新記事

2016米大統領選

トランプを勝利させた「白人対マイノリティ」の人種ファクター

2016年11月9日(水)18時00分
渡辺由佳里(エッセイスト)

Carlo Allegri-REUTERS

<大統領選の勝敗を決めたのは「白人対マイノリティ」という対立の構図だ。これからのアメリカのために、トランプは大統領選で作り上げた差別的な人物像をまず捨てなければならない>(写真:ニューヨークの勝利宣言会場で支持者にあいさつするトランプ)

 ドナルド・トランプ大統領のアメリカで、人々の怒りはどこに向かうのか?

 今回の大統領選は、最初から最後までが常識外れだった。

 投票当日まで、メジャーな予測機関はすべてヒラリーの勝利を予測し、その大部分が80%以上という高い確率を出していた。

 ところが、トランプが激戦州を次々と獲得しただけでなく、ヒラリーが楽勝するだろうと見られていた州でも苦戦した。

 これは、世論調査だけでなく、トランプ陣営自身も予想していなかった結果だろう。

 なぜこのようなことが起きたのだろうか?

 トランプが予想外に得票を伸ばした地域を見ると、その原因が見えてくる。

【参考記事】「トランプ勝利」世界に広がる驚き、嘆き、叫び

 これまで民主党が優勢だった地域でもトランプが優位に立っている。過去には重工業が盛んだったが、産業が時代遅れになって繁栄から取り残された「ラストベルト」と呼ばれる中西部だ。そこで暮らす有権者の多くは労働者階級の白人だ。

 彼らは、予備選でサンダース候補を支持した人たちでもある。民主党は彼らの票を期待していたが、彼らは民主党ではなくトランプを選んだのだ。筆者がコラム『トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実』で書いた人々にとって、トランプもサンダースも、どちらも自分の声を代弁してくれる存在なのだ。

 だが、もうひとつ明らかになったのは、「白人対マイノリティ/移民」という対立の構図だ。開票結果を見ると、これが最も大きなファクターとなったと考えざるを得ない。

 アメリカの国民は依然として白人が最も多いが、近年はマイノリティが急増している。1992年には有権者の84%が白人だったが、現在は70%でしかない。彼らは、それを肌で感じているはずだ。

 白人の支持が多いのは共和党で、92年には党員の93%が白人、16年現在も86%を維持している。一方の民主党は、92年は白人支持者が76%だったが、現在は57%に減少し、半数近くがマイノリティになっている(ピューリサーチセンターの調査より)。

 黒人のオバマが出馬した2008年には、黒人の93%、ヒスパニック系の71%、アジア系の73%がオバマに票を投じた。今回の選挙ではヒスパニック系の投票が増えたと言われ、それがヒラリー有利に働くと予想されていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中