最新記事

2016米大統領選

【写真特集】究極の選択をするアメリカの本音

2016年11月1日(火)20時12分
Photographs by Q. Sakamaki

ヤシン・ハック(37) ニューヨーク市の更生施設勤務――妻のナシマ(34)、娘のインシア(11)、息子のリハーブ(9)と共に。ベンガル人のイスラム教徒で、米市民権を取得した。夫婦2人ともクリントンに投票予定だ。「究極の選択だがヒラリーのほうが多様性を認めている」とヤシン。ナシマは「最近はベールを着けていると変な目で見られる。たぶんトランプのイスラム教徒に対する発言のせい」と語る

<今年の米大統領選は「嫌われ者」同士の対決。有権者はどのような理由で誰に投票するのか。ドナルド・トランプの「地元」であり、ヒラリー・クリントンの政治基盤でもあるニューヨーク州で、両候補支持者の声を聞いた>

 今年の米大統領選は、言わば「嫌われ者」同士の対決だ。共和党のドナルド・トランプと民主党のヒラリー・クリントンは、「アメリカ史上最も不人気なライバル候補」とされている。8月末の時点で、有権者の不支持率は両者とも約60%に上った。

 それでもアメリカはどちらかをホワイトハウスの長に選ばなければならない。どちらも支持しない人でも、より嫌いな候補の当選を阻止するために、もう一方に投票せざるを得ない「究極の選択」を迫られている。

 本誌は10月上旬、ニューヨーク州でトランプ支持者とクリントン支持者の声を聞くべく、一般人への取材、撮影を行った。同州はトランプの出身地でビジネス基盤でもある「地元」。対するクリントンにとっても大事な政治基盤だ。彼女は01年から8年間、ニューヨーク州選出の上院議員を務めた。

 ところが実際は、政治的な場以外で2人の熱心な支持者を見つけることは容易ではなかった。世論調査によれば、同州での支持率はクリントンが約50%、トランプが約30%。これには候補者本人ではなく民主党や共和党を支持している場合も含まれる。

 多様な人種が集まるニューヨークはリベラル色が強く、大統領選では88年以降、民主党候補の勝利が続いてきた。だがファーストレディー時代から政界にどっぷり漬かり、特にウォール街との関係で黒い疑惑も絶えない「政治屋」クリントンを信用できないとする声は根強い。それでもクリントンに投票するのは、「トランプという最悪の選択肢よりはましだから」という本音も聞こえてくる。

 トランプへの熱心な支持を公言する人を見つけるのは、クリントン以上に難しかった。特に高学歴の共和党員はトランプが候補であることを恥じている様子で、トランプを支持はしないが党の理念存続のために「仕方なく」投票すると、小さな声で答える印象だった。

 先週時点までの世論調査どおりなら、大統領選ではクリントンが手堅い勝利を収めることになる。気になるのは、表に出てこない「隠れトランプ支持者」の動向だ。クリントン勝利の予想に安心した浮動票層が投票に行かなくなれば、「クリントン阻止」の票が逆に上回る可能性もゼロではない。

 11月8日、アメリカはどのような選択をするのだろうか。

小暮聡子(ニューヨーク支局)

【参考記事】<ニューストピックス>決戦 2016米大統領選

photo_voters161101-2.jpgtrump_mark.jpgケイティー・ファーメフレッツォ(18)
高校生
マンハッタン近郊スタッテン島のアイスクリーム店のアルバイト店員。大統領選は18歳から投票権が認められているが、投票するかどうかは分からない。だが、もし投票するならトランプだ。理由は「ヒラリーは主張がころころ変わるし、政治的に腐敗していて嘘つきだから」。1つの家族から2人の大統領が出るのも良くないと考えている

photo_voters161101-3.jpgtrump_mark.jpgオマール・サンチェス(30)
洗濯サービス業
メキシコからの移民だが、現在はアメリカ市民。「自分は合法的にアメリカにやって来た。不法入国する連中は嫌いだ。だからトランプの移民政策を支持している。彼が好きだし、彼に投票するつもりだ」と語る。トランプはこれまでメキシコからの移民を「レイプ犯」と呼び、国境沿いに壁を築き不法移民は強制送還させるなどと発言している

photo_voters161101-4.jpgtrump_mark.jpgマイク・ファイン(35)
コメディアン/ライター
ニューヨーク生まれ、ニューヨーク育ち。民主党に党員登録しているが、今回はトランプに投票する。理由は、クリントンのような腐敗した「政治屋」は権力を乱用するから。トランプも嫌いだが、「ビジネスマンだからいろいろな人との交渉の仕方を知っている」。全米ライフル協会(NRA)の会員であり、クリントンの銃規制も懸念材料だ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィリピン経済は26年に回復、少なくとも5%成長達

ビジネス

香港のステーブルコイン発行許可、3月に第1陣付与へ

ビジネス

大和証G、10─12月期の純利益は0.4%減 リテ

ワールド

アングル:米圧力で燃料不足深刻化 キューバ、生活防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 6
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    【銘柄】「大戸屋」「木曽路」も株価が上がる...外食…
  • 10
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中