最新記事

インタビュー

「脳を鍛える」こともマインドフルネスの一種

2016年10月28日(金)16時12分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

――具体的には何をすべきなのか?

 まず(1)身体面では有酸素運動をすること。心拍数を増やし、心血管運動につながるスキーやテニス、バスケットボールなどがおすすめだ。ただし、そこまでやる時間がないというのであれば、ちょっと速めのウォーキングでもいい。通勤・通学時にいつもより速めに歩くことは誰でもできるだろう。私自身、過去15年間でいろいろ試してみたが、クロスカントリーが一番いいと思っている。クロスカントリーをするために週2、3回ジムに通い、少しずつトレーニングを続けることが効果的であることがわかった。

(2)メンタル面でやることはやはり瞑想だ。ストレスを感じない人はいない。問題はただ漠然とストレスを感じていること。瞑想することで静かに自分に向き合い、自分のストレスの原因を探り、どのように自分がストレスを感じているかを突き止められるようになる。そうすれば、どうストレスに対処していけばいいのかがわかるようになる。

(3)社会的つながりとは、常に環境を変えるということだ。実は、転職するとまったく新しい環境への適応のために脳がとても活発になり、脳を鍛えることにつながる。とはいえ、脳を鍛えるために転職し続けるなんてことはできないので、同じ職場にいても常に異なるポジションや仕事を求め続けることが大切だ。それも脳を鍛えることになる。残念ながら私の母国スペインは非常に失業率が高いことが社会問題になっている。無職の状態は脳に停滞状態をもたらすため、長期化しないように常に自分を異なる環境にもっていくようにすることが大事だ。

【参考記事】コーヒー、アルコール、喫煙、肥満......脳によくないのはどれ?

――日本でマインドフルネスが欧米ほど流行しないのはなぜか?

 日本は仏教徒が9割で非常に世俗的と聞いているので、それはおもしろい話だ。実は欧米でも、ヨガや瞑想をはじめとするマインドフルネスは宗教的なものとして取り入れられたわけではなく、心身を豊かにする健康法として取り入れられ、長年ブームになっている。もし、日本人が旅行ついでに寺社を訪ねる習慣があるなら、心を穏やかにしたり、自分を見つめ直す機会であったりと、それもマインドフルネスのひとつではないだろうか。

――脳はデジタルデバイスとどう付き合うべきか?

 パソコンやスマートフォンなどのデジタルテクノロジーが脳に悪影響を与えるという話はよく聞くが、実際には「脳を殺している」と言える。ただし、テクノロジー自体が悪いのではない。

 人類はテクノロジーの発展に合わせて生活スタイルを変えてきた。たとえば電気のない時代にはそれに合った生活をしていた。ただし、過去20年におけるデジタルテクノロジーの発展は、私たちの脳と健康にかつてないほどの急激な変化と転換を迫っている。そのスピードに私たちの脳が追いついていないのだ。

 しかし、いくら「脳を殺している」と言っても、いまや完全なアナログ生活に戻ることはできない。メールをリアルタイムでチェックし、SNSで家族や友人とつながったり、ゲームで遊んだりと、仕事でもプライベートでもデジタルデバイスなしに生活は成り立たない。だからこそ、急速に発展するデジタルテクノロジーと付き合うための脳を鍛える必要がある。


『脳を最適化する
 ――ブレインフィットネス完全ガイド』
 アルバロ・フェルナンデス、エルコノン・ゴールドバーグ、
 パスカル・マイケロン 著
 山田雅久 訳
 CCCメディアハウス


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:欧州で増加する学校の銃乱射事件、「米国特

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中