最新記事

金融政策

「財政拡張で金融緩和強化を」安倍首相の経済ブレーンの浜田参与

2016年10月27日(木)10時47分

10月26日、安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授(写真)は、ロイターとのインタビューで、雇用情勢の改善を持続させるには、金融緩和の効果を増大させる財政拡張が重要と語った。写真は2014年12月都内で撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

 安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は26日、ロイターとのインタビューで、雇用情勢の改善を持続させるには、金融緩和の効果を増大させる財政拡張が重要と語った。

 2016年度第3次補正予算の編成にも前向きな見解を示した。

 一方、金融政策について、現状でのマイナス金利深掘りは必要ないとした。

 安倍政権の経済政策であるアベノミクスに関し、第1の矢である大規模な量的金融緩和の推進で労働市場や企業収益の改善など効果を発揮したが、「金利がゼロ%に近づき、量的緩和の影響は当初に比べると薄れてきている」との認識を示した。

 こうした中、日銀は9月に政策の軸足をそれまでの「量」から「金利」に転換。短期のマイナス金利政策と長期金利をゼロ%程度に誘導する「長短金利操作付き量的・質的金融緩和(QQE)」を導入した。

 浜田氏は金融緩和の効果が拡大しなければ「雇用情勢の改善も止まってしまう可能性がある」とし、すでに金融政策が「全開」の中で「効果を一層強化するには、財政政策も活用していかなければならない」と強調。

 財政拡大で市場金利が上昇し、民間投資が抑制される「クラウディングアウト」懸念などから、これまでは財政の効果に懐疑的な見方を示していたが、日銀の長期金利コントロールによって「クラウディングアウトが避けられるとともに、財政の助けによって金融緩和が一段と効果を発揮する」と語った。

 そのうえで、事業規模28兆円に及ぶ大規模な経済対策など安倍首相が積極財政を明確化したことを「アベノミクスは非常にいい方向」と評価。与党内で待望論が出ている16年度の第3次補正予算の編成にも前向きな姿勢を示した。

 こうした経済政策は、中央銀行による国債の直接引き受けなどで財政を拡大する「ヘリコプターマネーではない」と強調。ヘリコプターマネーは政府の無駄遣いやインフレ高進に歯止めが効かないとし、財政・金融の連携においても「物価目標はコアコアCPI(食料・エネルギーを除いた消費者物価)で1.5%でいいが、それが達成されれば、消費税率を毎年1%ずつ上げていくことも進言したい」と語った。

 また、今後の日銀の金融政策運営に関し、「マイナス金利のさらなる深堀りは、ビジネスに脅威となる可能性がある」とし、現状では必要ないとの認識を示した。

 (伊藤純夫 金子かおり 編集:吉瀬邦彦)

[東京 26日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドGDP、7─9月期は前年同期比8.2%増 予

ワールド

今年の台湾GDP、15年ぶりの高成長に AI需要急

ビジネス

伊第3四半期GDP改定値、0.1%増に上方修正 輸

ビジネス

独失業者数、11月は前月比1000人増 予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中