最新記事

女性問題

中絶してホッとする女性はこんなに多い──ネットで買える中絶薬利用、終身刑のリスクも

2016年10月18日(火)19時00分
ルーシー・クラーク・ビリングズ

Aslan Alphan/iStock.

<終身刑と脅されても中絶を選びたい女性たちに朗報。罪悪感より解放感を感じた女性は他にもたくさんいる>

 アイルランドと北アイルランド出身の数千人の女性は、ウェブサイトで入手した薬で人工妊娠中絶を行って良かった、と口をそろえる。彼女たちにとって唯一の心残りは、そのために法律を破らなければならなかったことだ。

 アイルランドも北アイルランドも、中絶を厳格に禁止している。だが2006年から、オランダに本部を置くNGO「ウィメン・オン・ウェブ(Women on Web)」がオンライン診察を開始、条件を満たした女性には、妊娠10週までの中絶に対応できるミフェプリストンとミソプロストールの2種類の錠剤を送っている。

【参考記事】「中絶ドローン」がポーランドへ飛ぶ

 2010年1月から2015年12月までの6年間で、5650人の女性が同ウェブサイトを通じて自宅でできる中絶薬を注文し、そのうち97%という圧倒的多数が正しい選択だったと感じていた。

7割が味わった「解放感」

 英医学専門誌「British Journal of Obstetrics and Gynaecology」で発表された報告によると、女性が中絶後に寄せる感想で最も多かったのは「解放感(70%)」や「満足感(36%)」だ。

 多くの女性が、望まない妊娠をしたことや中絶のための海外渡航費を工面できないことなどが原因で、深刻な精神的ストレスを抱えていた。経験者の98%が、同じ境遇の女性がいればウェブサイトで中絶薬を注文するよう勧めるだろうと回答した。

【参考記事】アメリカ最高裁、中絶制限のテキサス州法を無効と判断

 以前まで、中絶を望むアイルランドの女性はわざわざイギリスまで行かなければならなかった。1970~2015年の間にアイルランドから18万797人、北アイルランドから6万1311人の女性が中絶のためにイギリスへ渡った。

 北アイルランドで中絶薬を入手したり他人の利用を助けたりすれば、刑事告発される可能性があり、量刑も最高で終身刑が科せられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

PB目標転換「しっかり見極め必要」、慎重な財政運営

ワールド

中国、日中韓3カ国文化相会合の延期通告=韓国政府

ワールド

ヨルダン川西岸のパレスチナ人強制避難は戦争犯罪、人

ワールド

アングル:日中関係は悪化の一途、政府内に二つの打開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 8
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中